[[index.html|醒睡笑]] 巻2 吝太郎(しはたらう)
====== 3 すぐれてしはき者のたまたま得たる客あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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すぐれてしはき者の、たまたま得たる客あり。「何をがなと思ひても、在郷(ざいがう)の風情なれば、心ばかりや」などと言ふところへ、「豆腐は、豆腐は」と売りに来たれり。亭主、「豆腐を買はん。さりながら小豆の豆腐か」。「いや、いつもの大豆ので候ふ」と。「それならば買ふまい。珍しうあるまいほどに」と。
亭主の口上、作意あるやうにて、とかく汚なし。「人性欲平、嗜欲害之。(人の性平らかならんと欲すれば、嗜欲これを害す。)」と『淮南子((『淮南子』斉俗訓))』にも書きたり。
また蜷川新右衛門親当(ちかまさ)((智蘊・蜷川親当))が歌に、
紫の色よりもこき世中のよくには恥をかきつばたかな
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===== 翻刻 =====
一 すくれてしはき者のたまたま得たる客あり
何をかなとおもひても在郷の風情なれは心
斗やなとといふ処へ豆腐は豆腐はとうりに
来れり亭主たうふをかはんさりなから小豆
のたうふかいやいつもの大豆のて候とそれ
ならはかふまいめつらしふあるまいほとにと/n2-39r
亭主の口上作意あるやうにてとかくきたなし
人性欲平嗜欲害之と淮南子にも書
たり又蜷川新右衛門親当か哥に
紫の色よりもこき世中の
よくには恥をかきつはたかな/n2-39l