[[index.html|醒睡笑]] 巻2 躻(うつけ) ====== 28 ちとたくらだのありしが人に向ひてわれは日本一のことをたくみだいたはと・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-059|<>]] ちとたくらだのありしが、人に向ひて、「われは日本一のことをたくみだいたは」と言ふ。「何事をか」と問ふ。「さればよ。臼にて米を搗(つ)くを見るに、もちろん下へ下がる杵(きね)は役に立つが、上へ上がる杵がいたづらなり。所詮(しよせん)、上にも臼をかいさまに吊り、米を入れて搗かば、両(もろ)ともまた米白み、杵の上げ下げそつになるまいと思案したり」と言ひ果てぬに、「さて、吊り下げたる臼に、米の入れやうは」と問へば、「まことに、その思案はせなんだよ」。 [[n_sesuisho2-059|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 ちとたくらたのありしか人にむかひてわれは/n2-34r   日本一の事をたくみたいたはといふ何事を   かととふさればよ臼にて米をつくを見る   に勿論したへさかる杵はやくにたつが上へ   あかる杵かいたつらなり所詮上にも臼を   かいさまにつり米をいれてつかは両とも又米   しろみ杵のあけさけそつになるまいと思案   したりといひはてぬにさてつりさけたる   うすに米のいれやうはととへはまことに   其思案はせなんたよ/n2-34l