[[index.html|醒睡笑]] 巻2 躻(うつけ) ====== 16 うつけらしき友達どもの寄り合ひおのれおのれが妻の尊を語る中に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-047|<>]] うつけらしき友達どもの寄り合ひ、おのれおのれが妻の尊を語る中に、一人言ひけるは、「わが女房は手効いて、所帯ようて((「ようて」は底本「よりて」。諸本により訂正。))、姿いつくしく、愛敬(あいぎやう)あり。いはんかたなくおぼゆれども、とかく心が短慮にて、月々に一度二度われを叩くにくたびれた」。 また一人の男も、「それそれ、われが子持ちも、そしることはゆめとないが、ともすれば頭(あたま)を杖にて着(き)するに飽きはてた。 今一人言ひけるは、「とかく女房に叩かるるは日本一のうつけ者じや。さてさて、そち((「そち」は底本「はち」。諸本により訂正。))どもはほれ者や」と笑ふ時、先の二人、「何とぞ女に叩かれぬ身の持ちやうがあるかや」。「なかなか、秘事がある。知りたる者があるまい」と言うて、あげくに、「履物(はきもの)履かず逃げたがよい」と。 [[n_sesuisho2-047|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 うつけらしき友達とものよりあひをのれをのれ   か妻の尊をかたる中に一人いひけるは我が女房は   手きいて所帯よりてすかたいつくしく愛敬   有いはんかたなくおほゆれともとかく心かたん   りよにて月々に一度二度われをたたくに   くたひれた又ひとりの男もそれそれわれか   子もちもそしる事は努とないがともすれは   あたまを杖にてきするにあきはてた今一/n2-29r   人いひけるはとかく女房にたたかるるは日本一の   うつけ者しやさてさてはちともはほれ者やと   わらふ時先の二人なにとそをんなにたたかれ   ぬ身のもちやうかあるかや中々秘事かある   しりたる者かあるまいといふてあけくにはき   ものはかすにけたかよいと/n2-29l