[[index.html|醒睡笑]] 巻2 名付け親方 ====== 14 年八旬に余り初めて男子をまうけ悦び限りなし・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-013|<>]] 年八旬に余り、初めて男子をまうけ、悦び限りなし。ある東堂(とうだう)のもとにつれ行き、「優曇華(うどんげ)の花待ち得たる心地候ふ。この子の名を付けて賜び候へかし」と申しければ、「やすきこと」とて、「千代も」と付けらる。老父、ななめならずに思ひ、宿に帰り、あたりの人を招き、酒など盛りながしけり。 その座の中にまた東堂へ出で入る者ありて、「千代も」と付けられし子細を、「如何に」と問ひし時、「さればとよ、『八十に余りての子なれば、ぬしが子ではあるまい。ただ人の子にてあらん』と思ひ、さて『千代も』とは付けたよ。業平((在原業平))の歌に、   世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと祈る人の子のため とあるは」と返事なり。 [[n_sesuisho2-013|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 年八旬にあまりはしめて男子をまうけ   悦かきりなしある東堂のもとにつれ行   うとんけの花まち得たる心ち候此子の名を   つけてたひ候へかしと申けれはやすき/n2-10r   事とて千代もとつけらる老父ななめなら   すにおもひやとにかへりあたりの人をまねき   酒なともりなかしけり其座の中に又   東堂へ出入者ありて千代もとつけられし   子細を如何にととひし時されはとよ八   十にあまりての子なれはぬしか子ては   あるまいたた人の子にてあらんと思ひさて   ちよもとはつけたよ業平の哥に    世中にさらぬわかれのなくもかな/n2-10l    ちよもといのる人の子のため   とあるはと返事なり/n2-11r