[[index.html|醒睡笑]] 巻2 名付け親方 ====== 11 いかにも文盲なる者のさすが時々寺に出入りするあり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-010|<>]] いかにも文盲なる者の、さすが時々寺に出入りするあり。茶をもらひて飲むたよりに((「たよりに」は底本「てよりに」。諸本により訂正。))、「ずんぎり」といふ字は何と書き参らするぞや」。「直切と書く」と教ふる。「さらば、書いて給ふれ」と所望し、火燧袋(ひうちぶくろ)に入れて持ちぬ。 齢(よはひ)ふりて、頭(かしら)を剃り、みづから名を「道ずん」と呼ぶ。聞く人みな、「珍しや。つひに聞きたることもない」など言ふて、「『ずん』の字は」と問ふ。「直切(ずんぎり)のずんの字をさへ知らいで、物書きだてはおやめあれ」と、けつくに。 [[n_sesuisho2-010|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 いかにももんまうなる者のさすか時々寺に   出入するあり茶をもらひてのむてよりに   ずんぎりといふ字はなにと書まいらするそや   直切と書とをしふるさらはかいてたまふれ   と所望し火燧袋にいれてもちぬ齢ふり/n2-8l   てかしらをそりみつから名を道ずんとよふ   聞人みなめつらしやつゐにききたることも   ないなといふてすんの字はととふ直切のずん   の字をさへしらいて物かきたてはおやめあれ   とけつくに/n2-9r