[[index.html|醒睡笑]] 巻2 名付け親方 ====== 5 河内の国山のねきといふ所にさのみ事も欠かで世を送る百姓ありしが・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-004|<>]] 河内の国、山のねきといふ所に、さのみ事も欠かで世を送る百姓ありしが、われとわが名を「畠山の右兵衛佐((「右兵衛佐」は底本「石兵衛佐」。諸本により訂正。))」と付き、慢じくすみ、いやおうの返答をうちければ、人みなをかしき者に言ひなし、褒貶(はうへん)はすれども、誰ありて無益(むやく)と教ふる者もなかりしに、親類の者ども聞きかね、あたりに物など読みたる僧のありけるを頼み、右兵衛佐と引き合はせ、つねづね出入りをいたしければ、麻にそふ蓬(よもぎ)はためざるに直くなるいはれにや((「いはれにや」は底本「あはれにや」。諸本により訂正。))、僧の教訓とあればそむかず、貴みあへり。 よきみぎりを見合はせて、僧の言はれけるは、「そちの名を畠山右兵衛佐といへば、何とやらん言ひにくがるほどに、下を上になして、『山畠助兵衛』というてはいかがあらうず」と直しければ、「ともかくも、悪しきことはよものたまはじ」とて合点しけり。 [[n_sesuisho2-004|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 河内の国山のねきといふ所にさのみ/n2-5r   事もかかて世を送る百姓ありしかわれとわか   名を畠山の石兵衛佐とつきまんしくすみ   いやをうの返答をうちけれは人みなおかしき   者にいひなしほうへんはすれともたれあり   てむやくとをしふる者もなかりしにしんるい   の者とも聞かねあたりに物なとよみたる   僧のありけるをたのみ右兵衛佐と引合つねつね   出入をいたしけれは麻にそふ蓬はためさる   になをくなるあはれにや僧の教訓とあれは/n2-5l   そむかずたうとみあへりよきみきりを見あはせ   て僧のいはれけるはそちの名を畠山右兵衛佐と   いへはなにとやらんいひにくがるほとに下を   うへになして山畠助兵衛といふてはいかか   あらふすとなをしけれはともかくも   あしきことはよものたまはしとてかてんし   けり/n2-6r