[[index.html|醒睡笑]] 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの ====== 21 人にすぐれてもの祝ふ侍今夜の夢に梟が家の内へ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-152|<>]] 人にすぐれてもの祝ふ侍、「今夜の夢に梟(ふくらふ)が家の内へ飛び入りたると見たは」とあれば、被官(ひくわん)の候ひて、「それはめでたし。『鬼は外へふくろは内へ』と申しならはして候ふほどに」と言へば、侍、大きに悦喜(えつき)し、小袖を一重(ひとかさね)つかはしけり。 いかにも鈍(どん)なる傍輩(はうばい)、これを見、「われにも夢物語をせられよかし。気に合ふやうに言うて、小袖を取らんものを」と思ひゐつるが、かの主人、ある朝また、「この夕べ、われが頭(あたま)落つる落つると夢見たは」と語るに、かの鈍なる男、ふと出でて、「それこそめでたき((「めでたき」は底本「目出た」。諸本により訂正。))正夢、正夢」とぞ申しける。 [[n_sesuisho1-152|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 人にすくれて物いはふ侍今夜の夢に梟(ふくらう)か家   の内へ飛入たると見たはとあれは被官(ひかはん)の候   てそれは目出し鬼はそとへふくろは内へと申   ならはして候ほとにといへは侍大に悦喜し小   袖を一重つかはしけり如何にも鈍(とん)なる傍輩   是を見我れにも夢物語をせられよかし気に   あふやうにいふて小袖をとらん物をとおもひゐ   つるか彼主(かのしゆ)人ある朝又此ゆひへわれかあたま落る   落ると夢見たはとかたるに彼鈍なる男/n1-77r   ふと出てそれこそ目出たまさ夢まさ夢とそ   申ける/n1-77l