[[index.html|醒睡笑]] 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの ====== 14 商人元日に恵方より持ち来たる若夷を向へんと思ひ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-145|<>]] 商人(あきうど)、元日に恵方((底本表記「得方」。))より持ち来たる若夷(わかえびす)を向へんと思ひ、待ちゐたれば、案のごとく歳徳の方より売る者来たれり。 家の内へ呼び入れ、「受けむ」といふに、折しもその朝小雨降り、板に刷りたる紙濡れけり。売り主、一枚取りて見て、「これはめでたい((縁起をかついで逆に言っている。))」。懐(ふところ)へ入れ、また取りて見ては懐へ入れ、やうやくみなになる時分、ちと濡れたる一枚あるを、「これはなまめでたう候ふ」と言うて渡したり。 受くる者取りて見、「このえびすは濡れて候ふは」と言ひければ、「それよりそちでお炙りあれ」と。 [[n_sesuisho1-145|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 商(あき)人元日に得方(ゑほう)より持きたる若夷(わかゑひす)をむか/n1-73l   へんと思ひまちゐたれはあんのごとく歳徳の   方よりうる者来れり家の内へよひいれう   けむといふに折しも其朝小雨ふり板にすりた   るかみぬれけりうりぬし一枚取て見て是は   めてたい懐(ふところ)へいれ又取て見ては懐へいれやう   やくみなになる時分ちとぬれたる一枚あるを是は   なまめてたう候といふてわたしたりうくる者   とりて見このゑひすはぬれて候はといひけれはそ   れよりそちてをあふりあれと/n1-74r