[[index.html|醒睡笑]] 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの ====== 13 和泉国に大鳥といふ在所あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-144|<>]] 和泉国に大鳥といふ在所あり。その庄屋が惣領(そうりやう)の子、六歳なり。小弓に小矢をととのへ持たせけるが、元日の朝、矢を一つ射放し、俵に射付けて、「ととよ、ととよ、俵をゆうた」と。親、大きに喜び、「さてさて、めでたや。今年は尺の穂丈(ほたけ)も長く実りて、納むる俵の数々を結(ゆ)はんことよ」と祝ひぬ。 もはやこれにておきもせで、「今一度、矢を射て見せよ」と望み侍り。息子讃められ、心よげにまた射たりしが、今度は門の戸に当れり。「ととよ、あれ見よ。戸をゆふたは」とぞ教へける。 「射た」といふこと、わらはべの言葉に「ゆうた」と言ふにや。 [[n_sesuisho1-144|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 和泉国に大鳥といふ在所あり其庄屋か   惣領(さうりやう)の子六歳なりこゆみに小矢をととのへも   たせけるが元日の朝矢を一いはなし俵にゐつ   けてととよととよ俵をゆふたと親大によろこひさてさて/n1-73r   めてたやことしは尺のほたけもなかくみのりて   おさむるたはらのかすかすをいはん事よとい   はひぬもはやこれにてをきもせていま一度矢   をいてみせよと望み侍へりむすこほめられ   心よげに又いたりしか今度は門の戸にあた   れりととよあれみよ戸をゆふたはとそをし   へけるゐたといふ事わらはへの詞にゆふたと   いふにや/n1-73l