[[index.html|醒睡笑]] 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの ====== 4 貧乏神とわりなき知音の者ありしが・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-135|<>]] 貧乏神とわりなき知音の者ありしが、ちと酒に酔(ゑ)ひて壁にもたれゐ、居眠(いゐねぶ)りしけるみぎり、肩から物が何とも知れず、どうと落ちけり。目を覚まし手を合はせ、「やれやれ嬉しいことや。この年月、肩にゐたる貧乏殿が、今日といふ今日落ちて、わが身を離れたよ」と合点せしが、誰言ふとも知れず、「あまり多く寄り合ひ、そちが居眠りする間、油びやしを踏むとてとりはづし、一人落ちにき。いまだ果てはないぞ」と言へり。何と心に祝うても笑止しや。 雄長老   大きなる柿団扇(うちわ)がな二三本貧乏神をあふぎいなさん 也足((中院通勝))の判、「柿団扇は貧神のつくといへば、二・三本にてあふぐこといかが。弥増(いやまし)に長ずべくや」。 [[n_sesuisho1-135|<>]] ===== 翻刻 =====   貧乏(ひんほう)神とわりなき知音の者ありしが/n1-67l   ちと酒にゑひて壁にもたれゐいねふりし   けるみぎりかたから物がなにともしれすとう   とおちけり目をさまし手をあはせやれやれ嬉   しい事や此年月かたにゐたる貧ぼう殿かけふ   といふけふおちて我身をはなれたよと合点せ   しかたれいふともしれすあまりおほくより   あひそちかいねふりするあひた油へうし   をふむとてとりはづしひとりおちにきいま   たはてはないぞといへりなにと心にいはふても/n1-68r   せうしや 雄長老    大なる柿うちはかな二三ほん    ひんほう神をあふきいなさん   也足の判柿団扇は貧神のつくといへは   二三本にてあふく事いかか弥増(まし)に長すへ   くや/n1-68l