[[index.html|醒睡笑]] 巻1 鈍副子
====== 24 越中に井見の庄殿といふ大名あり世にすぐれたるうつけなりし・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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越中に井見(ゐみ)の庄殿といふ大名あり。世にすぐれたるうつけなりし。母儀、常に悔み歎き給ひしが、ある時の見参に、「笑止(せうし)や。そなたを内の者侮り、何事も言ひたきままに言うて、道なき作法と聞く。ちと折節は歯をも抜き、折檻もあらば、さほどまてはあるまじきものを」と教訓あれば、心得たりとうけごひ、「是非ともに一歯抜かんものを」とたくまれし。
さるほどに、八朔(はつさく)の礼とて、諸侍(しよさぶらひ)出仕ある。家老の人申すやう、「今日の御祝儀、千秋万歳、ことに天気よく」と祝ふなかばに、かの大名、「何と御祝儀天気もよしと、さう言ひたきままには言はせまひぞ」。
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===== 翻刻 =====
一 越中に井見の庄殿といふ大名あり世にすく
れたるうつけなりし母儀常にくやみ歎(なけき)給ひ
しかある時の見参に笑止(せうし)やそなたを内の
者あなとりなに事もいひたきままにいふて道
なきさほうときくちと折ふしははをもぬ
き折檻もあらはさほとまてはあるましき物を
と教訓(けうくん)あれは心得たりとうけごひ是非とも/n1-58r
に一はぬかん物をとたくまれし去程(さるほど)に
八朔(さく)の礼とて諸侍(しよさふらひ)出仕ある家老の人
申様今日の御祝義千秋万歳ことに天
気能くといはふなかはに彼大名なにと御祝義
てんきもよしと左右いひたきままにはいはせまひぞ/n1-58l