[[index.html|醒睡笑]] 巻1 鈍副子
====== 22 人食らひ犬のあるところへは何とも行かれぬなど語るに・・・ ======
===== 校訂本文 =====
[[n_sesuisho1-118|<>]]
「人食らひ犬のあるところへは、何とも行かれぬ」など語るに、「さることあり。虎といふ字を手の内に書きて見すれば、食らはぬ」と教ゆる。
後(のち)、犬を見、虎といふ字を書きすまし、手を広げ見せけるが、なにの詮(せん)もなく、ほかと食うたり。
悲しく思ひ、ある僧に語りければ、「推(すゐ)したり。その犬は一円蚊虻(もんまう)((文盲))にあつたものよ」。
[[n_sesuisho1-118|<>]]
===== 翻刻 =====
一 人くらひ犬のある処へはなにともゆかれぬなと
かたるにさる事あり虎といふ字を手の内
に書て見すれはくらはぬとをしゆる後犬を
見虎といふ字を書すまし手をひろけ見
せけるかなにの詮(せん)もなくほかとくふたりかなしく
思ひある僧にかたりけれは推(すい)したり其犬は一円/n1-57r
蚊虻(もんほう)にあつたものよ/n1-57l