[[index.html|醒睡笑]] 巻1 鈍副子
====== 21 大客のあらんよしを舅聞きつけにはかに造作をするゆゑ材木を選ばず・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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大客(おほきやく)のあらんよしを舅(しうと)聞きつけ、にはかに造作(ざうさく)をするゆゑ、材木を選ばず。節穴多しとて、気の毒に思へり。
かの娘、夫(おつと)に教ゆるやう、「見舞ひに行かれんに、節穴のことを申されば、『短冊(たんじやく)や色紙にて貼り給へ』と言はれよ」。もつともに思ひ行く。案のごとくの時宜(じぎ)なりき。舅、大きに喜び、「この年月、聟をうつけと言ひつるは嘘や」と。
その後、舅に腫物(しゆもつ)出で来たり。また見舞ひに行き見参して、「もし、薬を知り給はめや。ただ腫物の上に短冊・色紙を押し給へ」と。
『平家物語』に書きたる、平基盛、勢田山中に麦漆(むぎうるし)の指南と同じ。
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===== 翻刻 =====
一 大客のあらんよしを舅(しうと)聞(きき)つけ俄に造作(ざうさ)
をする故材木をえらはす節穴おほしとて
気の毒(とく)におもへり彼娘(むすめ)夫(おつと)にをしゆるやう
見舞にゆかれんにふしあなの事を申されは
短冊(たんしやく)や色(しき)紙にてはりたまへといはれよ尤に
おもひゆく案のことくの時宜(しき)なりき舅大
によろこひ此年月聟をうつけといひつ
るはうそやと其後舅に腫物出来たり又
見舞に行見参して若薬をしり給はめ/n1-56l
や唯腫物の上に短冊色紙ををしたまへと
平家物語に書たる平基盛(たいらのもともり)勢田山中に
麦漆(むきうるし)の指南(しなん)と同し/n1-57r