[[index.html|醒睡笑]] 巻1 鈍副子 ====== 16 小僧あり小夜更けて長棹を持ち庭をあなたこなたと振り回る・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-112|<>]] 小僧あり。小夜(さよ)更けて、長棹(ながざを)を持ち、庭をあなたこなたと振り回る。坊主、これを見付け、「それは何事をするぞ」と問ふ。「空の星が欲しさに、打ち落さんとすれども落ちぬ」と。「さてさて鈍なる奴や。それほど作(さく)がなうてなるものか。そこからは棹が届くまい。屋根へ上がれ」と。 お弟子はとも候へ。師匠の指南ありがたし。((この一行、底本では改行して二字下げ小書き。))   星一つ見付けたる夜の嬉しさは月にもまさる五月雨(さみだれ)の空 [[n_sesuisho1-112|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 小僧あり小夜ふけて長棹(なかさほ)をもち庭をあなた   こなたとふりまはる坊主是を見付それは   何事をするそととふ空の星(ほし)かほしさに   うちをとさんとすれともおちぬと扨々鈍なる   やつやそれほと作かなうてなる物かそこからは   棹(さほ)かととくまいやねへあかれと    お弟子はとも候へ師匠の指南ありかたし    星一つ見つけたる夜の嬉しさは    月にもまさる五月雨の空/n1-54l