[[index.html|醒睡笑]] 巻1 鈍副子
====== 1 鈍なる弟子斎に行く・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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鈍なる弟子、斎(とき)に行く。檀那、汁菜(しるさい)をととのへてもてなせども、あへて感ずることもなし。
坊主、伝へ聞いて、「なんぢ、うつけたり。明眼論(みやうげんろん)にいはく、『一日の師壇(しだん)は百劫の結縁。一度請に赴ては、師僧その檀那を以て親子(しんし)の如くせよ』とも書かれたり。人の賞翫(しようくはん)するをも知らず、むざと賜はる曲事(くせごと)ぞや。膳に向ひ箸を手に持ち、『御造作(ござうさ)』など言ひて食へ」と指南せり。
「もつとも」と同じ明くる朝(あさ)、斎に行く。「例のうつとりぞ。焼き塩ばかりにてよし」とて膳をすゑけるに、教へのごとく、弟子、箸をきつと持ち言ふやう、「めしは御造作に、お汁ばかりかよう御座あらうものを」と。
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===== 翻刻 =====
鈍副子
一 鈍なる弟子斎に行たんな汁菜(しるさい)をとと
のへてもてなせともあへて感する事もなし
坊主伝きいてなんちうつけたり明眼論(みやうけんろん)
に云一日の師壇(したん)百劫(こう)結縁(けちゑん)一度(と)赴(おもむいて)請(しやうに)師僧
以テ其ノ檀那(たんなを)如セヨ親子(しんしの)とも書れたり人の賞(しやう)
翫(くはん)するをもしらすむざとたまはる曲事(くせこと)そ
や膳(せん)にむかひ箸を手にもち御造作(さうさ)な
といひてくへとしなんせり尤と同し明(あくる)/n1-45l
朝(あさ)斎(とき)に行(ゆき)例のうつとりぞやきしほ斗に
てよしとて膳をすへけるにをしへのことく
弟子箸をきつともちいふやうめしは御
造作にお汁はかりかよふ御座あらふ
物をと/n1-46r