蒙求和歌 ====== 第12第10話(180) 戴逵破琴 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 戴逵破琴 ** 晋の戴安道((戴逵))は譙国の人なり。常に心を澄ましつつ、琴を弾き文を学びて、静かに世を送りき。 時に、武陵王睎((司馬睎))、琴曲をゆかしく思ひて、召しに遣はしけり。使(つかひ)に向ひて、琴を打ち割りていはく、「われ、王門の伶人にあたはず」と答へけり。 王、怒りて、戴安道が兄(このかみ)、述を召すに、進みて行きて、琴を弾きけり。   一人なほ思ひ捨てけむことの緒のうけひく声もあればある世に ===== 翻刻 ===== 戴逵(クイ)破琴  晋ノ戴安道ハ譙国ノ人ナリ/ツネニ心ヲスマシツツ琴ヲヒキ/d2-31r 文ヲマナヒテシツカニヨヲヲクリキ時ニ武陵王睎(キ)琴曲ヲユ カシク思テメシニツカハシケリツカヒニムカヒテ琴ヲウチ ワリテ云クワレ王門ノ伶人ニアタハストコタヘケリ王イカリテ 戴安道カコノカミ述ヲメスニススミテユキテ琴ヲヒキケリ ヒトリナヲ思ヒステケムコトノヲノ ウケヒクコヱモアレハアルヨニ/d2-31l