蒙求和歌 ====== 第11第14話(164) 謝敷応星 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 謝敷応星 ** 晋の謝敷、字(あざな)は慶緒といふ。 初月の小微星を犯せる天変あり。この星の一つの名は、処士星ともいへり。司天の占ふ所、「隠士のつつしみ」と奏せり。時に、戴安道、隠士として、しかも美才あり。世の人、これを惜しみ憂へけり。 しかはあれども、戴安道はつつがなくして、謝敷ぞ、殃(わざわひ)に当たりて、死ににけり。 その後、会稽の人士、呉の人をあざけりていはく、「呉中の高士は死を求むれども得ず」と言へりけり。   こもり江の水草(みくさ)がくれに住む鳰(にほ)の終りもそらにしるくもやあらぬ ===== 翻刻 ===== 謝敷応(ヰヨウ)星(セイ)  晋ノ謝敷アサナハ慶緒ト云初月/ノ小微星ヲヲカセル天変アリ コノホシノヒトツノ名ハ処士星トモ云ヘリ司天ノウラナウ 所隠士ノツツシミト奏セリ時ニ戴安道隠士トシテシカモ 美才アリヨノ人コレヲヲシミウレヘケリシカハアレトモ戴安 道ハツツカナクシテ謝敷ソ殃ニアタリテシニニケリソノ/d2-24r 後会稽ノ人士呉ノ人ヲアサケリテ云ク呉中ノ高 士ハ死ヲモトムレトモエスト云ヘリケリ コモリエノミクサカクレニスムニホノ ヲハリモソラニシルモヤアラヌ/d2-24l