蒙求和歌 ====== 第4第12話(67) 郅都蒼鷹 鷹狩 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 郅都蒼鷹 鷹狩 ** 郅都、直諫にして、人に恐るる所なく、時の大臣をも、よこさまなることあれば、憚(はばか)る心もなく、言ひそしりけり。世人、目をそばめて、蒼鷹(あをきたか)と名付けけり。 郅都、鴈門の太守に移りて、匈奴(えびす)を従へけり。匈奴、木偶(ひとがた)を作りて、郅都と名付けて弓箭を取り、馬を馳せて射るに、時にのぞみて、「郅都ぞ」と思ふより((「思ふより」は底本「思ヲヨリ」。諸本により訂正。))心に迷ひて、わななきて、矢を放つことあたはず。 人にをちられたることかくなむありけり。   はし鷹の影映るらし入り日さす((底本「日」虫損。諸本により補入。))交野の草に鳥騒ぐなり ===== 翻刻 ===== 郅(シチ)都(ト)蒼鷹 鷹狩 郅都直諫ニシテ人ニヲソルル所ナク時ノ大臣ヲモヨコサマ ナルコト有レハハハカル心モナク云(イヒ)ソシリケリ世人目(メヲ)ソハメテ 蒼(アヲキ)鷹トナツケケリ郅都鳫門ノ大守ニウツリテ匈(エヒス)奴ヲ シタカヘケリ匈奴木偶(ヒトカタヲ)ツクリテ郅都トナツケテ弓(ユミ)箭(ヤヲ)/d1-32l トリ馬ヲハセテイルニ時ニノソミテ郅都ソト思ヲヨリ心ニマヨヒ テワナナキテヤヲハナツコトアタハス人ニヲチラレタルコトカク ナムアリケリ ハシタカノカケウツルラシイリ□サスカタノノクサニトリサハクナリ/d1-33r