蒙求和歌 ====== 第4第9話(64) 王覇氷合 氷 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 王覇氷合 氷 ** 漢記にいはく、光武((光武帝))、邯鄲より、王莽が軍(いくさ)を去りて、南の方、曲陽に至りて呼池((滹沱河を指す。書陵部本(桂宮本)は「呼沱」。「滹」は「呼」に通用し、古く「滹池」「呼池」とも表記したらしい。))を渡らむとするに、水早く船無しと言へり。左右の人、をののき、恐れけり。 時に、王覇をつかはして見せらるるに、はかりごとをめぐらして、「氷いたく結びて、渡りぬべし」と申すに、衆人、おほきに喜びて((「喜びて」は底本「ヨロヨヒテ」。書陵部本(桂宮本)により訂正))、並び渡りにけり。   旅人の駒渡すべき波路かはつららの上と思ひなさずは   駒渡すつららの道を知らせずは思ひよるべき波の上かは((底本は和歌を欠く。以上二首、書陵部本(桂宮本)により補う。)) ===== 翻刻 ===== 王覇氷合 氷 漢記云光武邯(カム)鄲(タム)ヨリ王莽カイクサヲサリテ南ノカタ曲(キヨク) 陽(ヤウ)ニイタリテ呼(コ)池ヲワタラムトスルニ水ハヤク船ナシト云リ 左右ノ人ヲノノキヲソレケリ時ニ王覇ヲツカハシテミセラルル ニハカリコトヲメクラシテコホリイタクムスヒテワタリヌヘシ ト申ニ衆人ヲホキニヨロヨヒテナラヒワタリニケリ/d1-32r