[[index.html|唐鏡]] 第四 漢武帝より更始にいたる ====== 3 漢 孝武帝(3 秋風辞) ====== ===== 校訂本文 ===== [[m_karakagami4-02|<>]] 元封元暦春、角觝(かくてい)((底本表記「角柢」。以下同じ。))の戯れあり。三百里の内みな見る。角觝とは相撲(すまふ)なり。 三暦、柏梁台(はくりやうだい)造り建てられて、宴会の時群臣に詔して、よく七言をなすものを賞して、上座(じやうざ)することを得しむ。これぞ連句の濫觴(らんしやう)にて侍る。太初((底本表記「大初」。))元暦よりぞ、正月をもて暦の始めとせられし。これよりさきには、十月をもて暦の始めとせられ侍りき。 天漢元暦、河東に行幸して、后土(こうど)を祠らる。その時帝、「秋風の辞(ことば)」を作り給ふ。  秋風起兮白雲飛(秋風起つて白雲飛ぶ)  草木黄落兮雁南帰(草木黄落して雁(かり)南に帰る)  泛楼船兮済汾河(楼船を泛(うか)べて汾河を済(わた)る)  橫中流兮揚素波(中流に橫(よこた)へ素波を揚ぐ)((「秋風辞」は九句からなるが、初句・二句、五句・六句を挙げる。)) 御製作の詞(ことば)、万代の秀逸((底本表記「秀迭」。))なるべし。 [[m_karakagami4-02|<>]] ===== 翻刻 ===== 元封元暦春角柢(カクテイ)の戯(タハムレ)あり三百里の内皆みる/s99l・m177 https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100182414/viewer/99 角柢(カクテイ)とは相撲(スモウ)なり 三暦柏梁臺(ハクリヤウタイ)つくりたてられて宴会のとき 群臣に詔してよく七言をなすものを賞して 上坐(シヤウサ)する事を得しむこれそ連句の濫觴(ランシヤウ)にて 侍る大初(タイソ)元暦よりそ正月をもて暦のはしめと せられしこれよりさきには十月をもて暦のはし めとせられ侍き 天漢(テンカン)元暦河東に行幸して后土(コウト)を祠らるその時 帝穐風ノ辞(コトハ)を作給穐風起(ヲコツテ)兮白雲飛(トフ)草木黄(クワウ) 落(ラクシテ)兮雁(カリ)南(ニ)帰(カヘル)泛(ウカヘテ)楼船(ヲ)兮済(ワタル)汾河(ヲ)橫(ヨコタヘ)中流(リウニ)兮揚(アク)/s100r・m178 素波(ヲ) 御製作のことは万代の秀迭(シウイツ)なるへしこの御時東(トウ)/s100l・m179 https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100182414/viewer/100