十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事 ====== 10の52 菅三位の終焉のきざみ近づきけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 菅三位((菅原文時))の終焉((底本「終要」。諸本により訂正。))のきざみ近づきけるに、善知識の聖人、呼びにやりたりければ、「身は参らずとも同じことなり。『今はかく』と思しめさん時、詩を一首作り給へ」と言へり。 そのままに案じけるほどに、極楽の荘厳、心に浮びて、たちまちに聖衆の来迎にあづかり給ひける。 その機根をはからひて、聖人もかく勧めけるにや。 ===== 翻刻 ===== 五十五菅三位ノ終要ノキサミ近キケルニ、善知識ノ聖人ヨヒ ニヤリタリケレハ、身ハマイラストモ同事也、今ハカクト思 食ン時、詩ヲ一首作給ヘト云リ、其ママニ案シケルホトニ、/k90 極楽ノ荘厳心ニウカヒテ、忽ニ聖衆ノ来迎ニアツカリ 給ヒケル、其機根ヲハカラヒテ、上人モカク勧メケルニヤ、/k91