十訓抄 第二 驕慢を離るべき事 ====== 2の1 列子伝といふ文にいはく・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 列子伝といふ文にいはく、孔丘((流布本の「狐丘」が正しい。以下同じ。))といふ人、孫叔敖に語りて云く、「人に三怨あり。これを知るや」。叔敖いはく、「何をかいふ」。答へていはく、「爵の高きは、人、これを嫉(ねた)む。官の大なるは、主、これを悪(にく)む。禄の厚きは、怨、これに及ぶ」と言へり。 九条殿((藤原師輔))、右大臣辞し給ふ時の表の文に、文時卿((菅原文時))書ける、   家好倹素 不奈龍洞之愁   禄致陳紅 恐乖孔丘之誡 ===== 翻刻 ===== 列子伝ト云文ニ云、孔丘ト云人、孫叔敖ニ語テ云ク、人ニ三 怨アリ是ヲ知ヤ、叔敖云、何ヲカ云、答云爵ノ高ハ人 是ヲネタム、官ノ大ナルハ主是ヲ悪ム、禄ノ厚ハ怨是ニ及 ト云ヘリ、 九条殿右大臣辞給時ノ表ノ文ニ、文時卿書ル、 家好倹素不奈龍洞之愁、禄致陳紅恐乖孔丘 之誡/k104