平中物語 ====== 第5段 またこの男正月の一日の日雨のいたう降りてながめ居たるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== また、この男、正月の一日の日、雨のいたう降りてながめ居たるに、友達のもとより、かくぞ言ひたる   春雨にふりかはりゆく年月の年の積りや老いになるらん さて、その友達の久しく訪れねば、男、また   君が思ひ今は幾らに分くればかわれに残りの少なかるらむ 返し   年ごとに歎きの数はそふれども誰にか分けん二心(ふたごころ)なし ===== 翻刻 ===== さてやみにけり又このおとこ正月のついたち のひあめのいたうふりてなかめゐたる にともたちのもとよりかくそいひたる 春さめにふりかはりゆくとし月の/11オ としのつもりやおいになるらん さてそのとんたちのひさしくおとつれね は男又 きみかおもひいまはいくらにわくれはか 我にのこりのすくなかるらむ かへし としことになけきのかすはそふれとん たれにかわけんふた心なし/11ウ