[[index.html|古今著聞集]] 興言利口第二十五 ====== 573 同じき四年の維摩会の延年に児白拍子の料春日の社の神人季綱を鼓打ちに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じき四年((建長四年。[[s_chomonju572|572]]参照。))の維摩会の延年に、児白拍子の料(れう)に、春日の社の神人季綱(号黒禰宜)を鼓打ちに召し具したりけり。 近ごろより、「男の鼓打、悪(あ)し」とて、大衆打つことになりける時、件(くだん)の黒禰宜、大便もよほしければ、頭を包みながら、猿沢の池の端に行きて、尻をかき上げてかまへけるを、衆徒見て、「大衆のいかにかかる見苦しき振舞ひする。希有なり。しや頭(かしら)はげ」といらてける時に、「季綱にて候ふ」と名乗りたりければ、「さる大衆の名乗りやうや侍るべき。奇怪なり」と言へば、手をすりて、頭をむきて、小髻(こもとどり)をささげて、「鼓打ちにて候ふぞ」と言ひければ、笑ひてのきにけり。 ===== 翻刻 ===== 同四年の維摩会の延年に児白拍子のれう に春日の社の神人季綱(号黒/禰宜)を鼓打にめしくしたり けり近比より男鼓打あしとて大衆うつことになり ける時件くろねき大便もよをしけれは頭をつつ みなから猿沢の池のはたに行てしりをかきあけ てかまへけるを衆徒みて大衆のいかにかかる 見くるしきふるまひする希有也しやかしらはけ といらてける時に季綱にて候と名のりたりけれ はさる大衆の名のりやうや侍へき奇怪なりと/s450r いへは手をすりてかしらをむきてこもととりを ささけて鼓打にて候そといひけれはわらひて のきにけり/s450l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/450