[[index.html|古今著聞集]] 興言利口第二十五
====== 554 周防国に曽祢といふ所を知りて下りける人色々しき者にて・・・ ======
===== 校訂本文 =====
周防国に曽祢といふ所を知りて下りける人、色々しき者にて、良き悪しきをきらはず、女といへば心を動かしけり。法師とて童(わらはべ)を入れて使はせけるに、この領所言ひけるは、「おのれが姉にて侍るなる女は、よにさはやかにて、見目も良きよし聞くに、しのびやかに呼びて、われに参らせよ」と言ひければ。小童(こわらは)、「やすきほどのことにて候ふ。ただし、おれが母にて候ふ者こそ、姉よりもよく候へ。母をまかせ給ひ候へかし」と言ひたりける、不思議なる言ひやうなるべし。
===== 翻刻 =====
周防国に曽祢といふ所をしりてくたりける人色々
敷物にてよきあしきをきらはす女といへは心をう
こかしけりはうしとてわらはへをいれてつかはせける
に此領所いひけるはをのれかあねにて侍なる
女はよにさはやかにて見めもよきよし聞にしのひ
やかによひてわれにまいらせよといひけれはこわら
はやすき程の事にて候但をれか母にて候物こそ
あねよりもよく候へ母をまかせ給候へかしといひたり
けるふしきなるいひやうなるへし/s441l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/441