[[index.html|古今著聞集]] 宿執第二十三 ====== 495 山にうへすぎの僧都といふ人ありけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 山((比叡山延暦寺))にうへすぎの僧都といふ人ありけり。法に執深くて、たやすく弟子などにも授けざりけり。 死にて後、住房の天井の上に、重き音なひして落ちかかるもの聞こえけり。「あら苦しや」とぞ言ひける。聞く人、怖畏をなしながら、「誰人にてかくは」と問ひたりければ、「われはそれがしながら、法慳恡(ほふけんりん)の罪によりて、手もなき鬼となれるなり」とぞ言ひける。 秘すべきことも、いたく過ぎぬるは、罪になるにこそ。よく心得べきことなり。 ===== 翻刻 ===== 山にうへすきの僧都といふ人ありけり法に執ふか/s395l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/395 くてたやすく弟子なとにもさつけさりけり死て 後住房の天井のうへにおもき音なひして落かかる 物聞えけりあらくるしやとそいひける聞人怖畏 をなしなから誰人にてかくはととひたりけれはわれは それかしなから法慳恡の罪によりて手もなき鬼と なれる也とそいひける秘すへき事もいたくすき ぬるは罪になるにこそよく心うへき事也/s396r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/396