[[index.html|古今著聞集]] 哀傷第二十一
====== 455 法興院入道殿かくれさせ給ひて御葬送の夜山作所にて万人騒動のことありけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
法興院入道殿((藤原兼家))、かくれさせ給ひて、御葬送の夜、山作所(やまつくりどころ)にて万人騒動のことありけり。
町尻殿((藤原道兼))驚かせ給ひて、御往反(わうばん)ありける。御堂殿((藤原道長))は少しも騒がせ給はで、人々に尋ね聞かせ給ひて、「馬のはなれたるにこそ」と仰せられけり。頼光((源頼光))聞きて、「かくのごとくの主、将軍たるべし」とぞ感じ奉りける。
あはれなる中に、うちさましたることなるべし。この中に、また猛き心には、かく思ひ参らせて、感じ申けるこそいみじく((「いみじく」は底本「く」なし。諸本により訂正。))覚えけれ。
===== 翻刻 =====
法興院入道殿かくれさせ給て御葬送の夜山作
所にて万人騒動の事ありけり町尻殿おとろ
かせ給て御往反ありける御堂殿はすこしもさは
かせ給はて人々に尋きかせ給て馬のはなれたる
にこそと仰られけり頼光ききて如此之主将軍
たるへしとそ感したてまつりけるあはれなる中に
うちさましたる事なるへしこの中に又たけき心に
はかく思まいらせて感し申けるこそいみし覚けれ/s360l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/360