[[index.html|古今著聞集]] 画図第十六 ====== 405 絵師大輔法眼賢慶御の弟子になにがしとかやいふ法師ありけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 絵師大輔法眼賢慶の御弟子に、なにがしとかやいふ法師ありけり。賢慶逝去の後、後家と不快になりて、相論のことありけり。 六波羅に訴へけれども、ことゆかで、ほど経ければ、この法師、絵もさかしく書ける者にて、件(くだん)の後家がありさま・振舞ひを、始めより書きあらはしてけり。間男して会合したる所など、さまざまに描きて、えもいはず色どりて、詞(ことば)付けて、六波羅へ持ちて行きて、奉行の者どもに見せければ、訴訟をことに執(しふ)し申さんの心はなかりけれども、絵その興あるによりて、とかくもてさまよふほどに、両国司までも見て、訴訟の旨(むね)くわしく心得ほどきにけり。さて、つひに勝ちにけり。 件の法師、摂津国宇出荘にいまだあり。 ===== 翻刻 ===== 絵師大輔法眼賢慶御弟子になにかしとかやいふ法 師ありけり賢慶逝去の後後家と不快に成て相 論の事ありけり六波羅に訴へけれとも事ゆかて程 へけれは此法師絵もさかしく書けるものにて件の後 家かありさまふるまひを始より書あらはしてけりま男して/s304l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/304 会合したる所なとさまさまにかきてえもいはす色とり て詞付て六波羅へもちて行て奉行のものともにみせ けれは訴訟をことに執申さんの心はなかりけれとも 絵其興あるによりてとかくもてさまよふ程に両国司 まてもみて訴訟の旨くわしく心得ほときにけり さてつゐに勝にけり件法師摂津国宇出庄に いまたあり/s305r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/305