[[index.html|古今著聞集]] 弓箭第十三 ====== 352 左衛門尉平助綱はつやつや弓引きはたらかすことかなはざりける者なりけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 左衛門尉平助綱は、つやつや弓引きはたらかすことかなはざりける者なりけり。 家の棟に、たう((トキ))の飛び来てゐたりけるを、「これは忌むなるものを((「なるものを」は底本「なき物を」。諸本により訂正。))」と思ひて、立ち出でて見るほどに、下人、さうなく弓矢を取りて与へたりければ、なほざりに取りて射たりけるほどに、あやまたず射落してけり。 上手そら、なほ大事なり。さしもの弓引かずの身にて射当てたること、身の冥加(みやうが)の至り。されば、つつがなかりけりとなむいへり。 ===== 翻刻 ===== 左衛門尉平助綱はつやつや弓引はたらかす事叶さり ける物也けり家の棟にたうの飛きてゐたり けるを是は忌なき物をと思て立出て見るほとに 下人左右なく弓矢をとりてあたへたりけれは猶さ りにとりていたりける程にあやまたす射落してけり上/s258l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/258 手そら猶大事なりさしもの弓ひかすの身にて 射あてたる事身の冥加のいたりされはつつかなか りけりとなむいへり/s259r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/259