[[index.html|古今著聞集]] 好色第十一 ====== 320 左大弁宰相経頼卿前の妻の腹に最愛の小女ありけるを・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 左大弁宰相経頼卿((源経頼))、先の妻の腹に最愛の小女ありけるを、車に乗せて行幸を見物すとて、供奉の人の中に、「いづれか殿(との)にせんずる」と言ひて、人ごとに、「これは」と問ひければ、みな頭(かしら)を振りけるに、隆国卿(宇治大納言)((源隆国))のわたるを見て、「これをせん」と言ひければ、「まことにこれに過ぎたる人はあらじ」と思ひて、聟に取りてけり。 北の方、「わが女(むすめ)には、隆国よりも良からん人をあはせよ」と責めければ、それよりまさらん人はありがたければ、才学につきて資仲卿((藤原資仲))をあはせてけり。かの卿、しきりに隆国を争ひ思ひけれども、昇進及ばず、その子息にて隆俊卿((源隆俊))にさへ従上の四位の所は越えられにけり。隆俊中納言の時は、資仲卿はいまだ蔵人頭にだにもならざりけり。 ===== 翻刻 ===== 左大弁宰相経頼卿さきの妻の腹に最愛の小女あり けるを車にのせて行幸を見物すとて供奉の人の中に いつれかとのにせんするといひて人ことにこれはと問けれは みなかしらをふりけるに隆国卿(宇治大納言)のわたるを見てこれをせんと いひけれはまことにこれに過たる人はあらしと思て聟に とりてけり北方わかむすめには隆国よりもよからん人を/s220l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/220 あはせよとせめけれはそれよりまさらん人はありかたけれは 才学につきて資仲卿をあはせてけり彼卿しきりに隆 国をあらそひ思けれとも昇進をよはすその子息にて 隆俊卿にさへ従上の四位の所は越られにけり隆俊中 納言の時は資仲卿はいまた蔵人頭にたにもならさりけり/s221r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/221