[[index.html|古今著聞集]] 管絃歌舞第七
====== 249 大弐資通卿管絃者どもを伴ひて金峰山に詣づることありけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
大弐資通卿((源資通))、管絃者どもを伴ひて金峰山に詣づることありけり。下向の時、路次(ろし)に古き寺あり。その中におりゐて休みけるついでに、そのへんを見めぐりけるに、一人の老翁ありけるを呼びて、「この寺をば何といふぞ」と問ひければ、翁、「これをば豊等寺(とよらでら)((豊浦寺))と申し侍り」と答ふ。また寺の傍らに井あり。「これ、榎葉井(えのはゐ)と申す」と言ふ。また、「後ろの山は何山といふぞ」と問ふ。「この山は葛城山(かづらきやま)なり」と答ふ。人々、これを聞きて感涙をたれて、おのおの堂に入りて、寺をうち掃(はら)ひて、葛城を数反(すうへん)歌ひて帰りけり。
===== 翻刻 =====
大弐資通卿管絃者ともを友なひて金峯山にまうつ
る事ありけり下向の時路次にふるき寺ありその
なかにおり居てやすみけるついてにそのへんを見め
くりけるに一人の老翁ありけるをよひてこの/s165l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/165
寺をはなにといふそと問けれは翁これをは豊等寺と
申侍とこたふ又寺のかたはらに井ありこれ榎葉井
と申といふ又うしろの山はなに山といふそととふこの山
は葛城山なりとこたふ人々これをききて感涙をたれ
ておのおの堂に入て寺をうちはらひて葛城を数
反うたひて帰けり/s166r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/166