[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六
====== 193 後鳥羽院の御時定家卿殿上人にておはしける時・・・ ======
===== 校訂本文 =====
後鳥羽院((後鳥羽天皇))の御時、定家卿((藤原定家))殿上人にておはしける時、いかなることにか、勅勘によりてこもりゐられたりけるが、あからさまに思ひけるに、その年もむなしく暮れにければ、父俊成卿((藤原俊成))このことを歎きて、かく詠みつつ((「かく詠みつつ」は底本「かくみつつ」。諸本により訂正。))職事(しきじ)に付けたりけり((「付けたりけり」は底本「つけてたりけり」。諸本により訂正))。
あしたづの雲居にまよふ歳暮れて霞をさへや隔て果つべき
職事、この歌を奏聞せられければ、御感ありて((底本「て」なし。諸本により補う。))、定長朝臣((藤原定長))に仰せてぞ御返事ありける。
あしたづは雲居をさして帰るなり今日大空の晴るるけしきに
やがて、殿上の出仕許(ゆ)りられにけり。
===== 翻刻 =====
後鳥羽院御時定家卿殿上人にておはしける時いかなる事
にか勅勘によりてこもりゐられたりけるかあからさまに
思けるに其年もむなしく暮にけれは父俊成卿この事を
なけきてかくみつつ職事につけてたりけり/s140l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/140
あしたつの雲ゐにまよふ歳くれて霞をさへやへたてはつへき
職事此哥を奏聞せられけれは御感あり定長朝臣に
仰てそ御返事ありける
あしたつは雲井をさして帰なりけふおほ空のはるるけしきに
やかて殿上の出仕ゆりられにけり/s141r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/141