[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六 ====== 175 同じ式部が娘小式部内侍この世ならずわづらひけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じ式部((和泉式部。[[s_chomonju174|174]]参照。))が娘(むすめ)小式部内侍、この世ならずわづらひけり。かぎりになりて、人の顔なとも見知らぬほどになりて臥したりければ、和泉式部、傍らに添ひ居て、額(ひたひ)をおさへて泣きけるに、目をはつかに見上げて、母が顔をつくづくと見て、息の下に、   いかにせむ行くべき方もおもほえず親に先立つ道を知らねば と弱り果てたる声にて言ひければ、天井の上に、あくびさしてやあらんと覚ゆる声にて、「あらあはれ((「あらあはれ」は底本「あらはれ」。諸本により訂正。))」と言ひてけり。さて、身のあたたかさも冷めて、よろしくなりてけり。 ===== 翻刻 ===== 同式部かむすめ小式部内侍この世ならすわつらひけり限に なりて人のかほなとも見しらぬ程に成てふしたりけれは 和泉式部かたはらにそひゐてひたいをおさへて泣けるに 目をはつかに見あけて母か顔をつくつくとみていきのしたに/s129r  いかにせむ行へきかたもおもほえす親にさきたつみちをしらねは とよはりはてたるこゑにていひけれは天井のうへにあくひさし てやあらんとおほゆるこゑにてあらはれといひてけりさて 身のあたたかさもさめてよろしくなりてけり/s129l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/129