[[index.html|古今著聞集]] 釈教第二 ====== 72 いつごろのことにか書写上人みづから如法如説に法華経書き給ひけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== いつごろのことにか、書写上人((性空))みづから如法如説に法華経書き給ひけるに、炎魔宮((閻魔王宮))より冥官をもて申し送りけるは、「自業自得果の衆生の業を報はんがために、みなわが所に来たる。その報いいまだ尽きざるに、上人の写経の間、罪報の衆生、みな人中・天上に生(む)まれ、あるいは浄刹に詣づる間、罪悪の地ことことく荒廃せり。願はくは、上人、経を書き給ふことなかれ」と訴(うた)へ申したりければ、上人のたまひけるは、「このことわが進退にあらず。早く釈迦如来に申さるべし」とぞ答へ給ひける。 本にいはく((以下注記。))、 この一段、竹園御本を以って追ひてこれを加へおはんぬ。定昭僧都の次、性信親王の上(([[s_chomonju049|49]]と[[s_chomonju050|50]]の間にこの説話があったという意味。))にこれあり。 ===== 翻刻 ===== 何比の事にか書写上人みつから如法如説に法華経書 給けるに炎魔宮より冥官をもて申送けるは 自業自得果の衆生の業をむくはんかためにみな我所に きたるその報いまた尽さるに上人の写経の間罪報 の衆生みな人中天上にむまれ或は浄刹に詣る間罪悪の 地ことことく荒廃せり願は上人経を書給事なかれと うたへ申たりけれは上人の給けるは此事我か進退に あらす早く釈迦如来に申さるへしとそこたへ給ける 本云  此一段以竹園御本追而加之了定昭僧都次性信親王上ニ  有之/s67r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/67