[[index.html|古今著聞集]] 神祇第一 ====== 31 大夫史淳方若かりける時常に賀茂へ参りけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 大夫史(たいふのさくわん)淳方((小槻淳方))、若かりける時、常に賀茂((賀茂神社))へ参りけり。ある夜、下社((下鴨神社))に通夜したりけるに、人来たりて、淳方に告げけるは、「なんぢ、必ず大夫史にいたるべき者なり。その時偏頗(へんぱ)あるべからず((「べからず」は底本「人からす」。諸本により訂正。))。氏人祐継((鴨祐継))といふ者あり。それを師とすべし」とて失せにけり。 夢覚めて((「夢覚めて」は底本「夢て」。諸本により訂正。))、不思議の思ひをなして、「祐継といふ氏人やある」と尋ねければ、「禰宜祐頼((鴨祐頼))が次男に、いまだ年若き者あり」と聞きて、尋ね会ひて、祈りすべきよし契りてけり。 その後、祐継も禰宜にいたり、淳方も前途(せんど)とげてけり。官務九年が間、清廉の聞こえありし。ひとへに神の御はかりなりと覚えて、やむごとなし。 ===== 翻刻 ===== けり大夫史淳方若かりける時常に賀茂へまいりけり或夜 下社に通夜したりけるに人来て淳方に告けるは汝かならす 大夫史にいたるへきものなり其時偏頗ある人からす氏人/s27r 祐継といふものありそれを師とすへしとてうせにけり 夢て不思議の思をなして祐継といふ氏人やあると 尋けれは禰宜祐頼か次男にいまた年わかきものあり とききて尋あひて祈すへきよし契てけり其後祐継も 禰宜に至り淳方も前途とけてけり官務九年かあひた 清廉のきこえありし偏に神の御斗也と覚てやむことなし/s27l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/27