====== 遊仙窟 ====== ゆうせんくつ ===== 解説 ===== [[唐]]代(中唐)の恋愛小説。[[張文成]](張鷟)の作とされ、唐代小説中、最長編で内容的にも異色の作品である。 [[奈良時代]]にはすでに日本に将来され、古[[写本]]も多く伝えられており、日本の詩歌、[[物語文学]]にあたえた影響ははかりしれないが、中国では早くに散佚した。 [[文体]]は[[対句]]を多用した[[駢儷文]]で、多くの詩を挿入してあり、他の唐代[[伝奇小説]]にはない特徴を持っている。 また、先行の[[説話]]など、多くの[[典故]]を引いているのも特徴といえよう。 なお、『[[唐物語]]』、『[[宝物集]]』には、張文成が則天武后に向けた艶書として『遊仙窟』を書いたとあるが、漢籍に典拠は見当らず、当時([[平安時代]]末期)の俗説とみられる。 ===== 内容 ===== 『遊仙窟』は作者の一人称という形で話は進んでゆく。 勅命を奉じて故郷を離れ、黄河の源へと旅立った「私(張郎)」は偶然「神仙窟」という桃源郷をたずねる。そこで、張郎は十娘という美しい女に出会い、艶書を交わす。 <つづく> ===== 諸本 ===== * 『醍醐寺本「遊仙窟」古抄本』(法印権大僧都宗演書写・醍醐寺三宝院蔵・康永三年1344) * 『真福寺本「遊仙窟」古抄本』(僧賢智書写・真福寺法生院蔵・文和二年1353) * 『陽明文庫本』(俊覚校合・嘉慶三年1389) * 『江戸初期無刊記本』 * 『いわゆる慶安五年刊本「遊仙窟」』(中村太良左衛門開版・慶安五年・) * 『金剛寺本』(塙書房・平成12年出版) * 『游仙窟』(川島(章廷謙)校点・北新書局・1929年2月/上海書店影印・1985年11月) ===== 参考文献 ===== ==== 注釈書等 ==== * 『遊仙窟全講』(八木沢元・明治書院・昭和42年10月) * 東洋文庫『幽明録・遊仙窟』(前野直彬訳・東洋文庫・昭和40年5月) * 『遊仙窟』の訳は前野直彬。 * 他、『[[列異伝]]』『[[博物志]]』『[[神仙伝]]』『[[志怪]]』『[[捜神後記]]』『[[異苑]]』『[[妬記]]』『[[冥祥記]]』『[[述異記]]』『[[続斉諧記]]』『[[小説]]』『[[録異伝]]』『[[旌異記]]』の和訳を収録する。 * 岩波文庫『遊仙窟』(漆山又四郎訳注・岩波書店・昭和24年11月) * 岩波文庫『遊仙窟』(今村与志雄訳・岩波書店・平成2年1月) * 醍醐寺本の[[影印]]がオマケに付いてくる。 * 『遊仙窟総索引(醍醐寺本)』(築島裕・杉谷正敏・丹治芳男編・汲古書院・平成7年1月) * 『遊仙窟索引(漢字並古訓)』(西岡弘編・国学院大学漢文学研究室・昭和53年11月) * 『江戸初期無刊記本遊仙窟』(蔵中進・和泉書院・昭和56年4月) * 大仏次郎氏旧蔵の江戸初期無刊期本を影印、蔵中氏の解説あり * 『江戸初期無刊記本遊仙窟本文と索引』(蔵中進・和泉書院・昭和59年8月)