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text:yomeiuji:uji190 [2014/10/13 13:44] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji190 [2019/12/03 23:21] Satoshi Nakagawa
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 宇治拾遺物語 宇治拾遺物語
-====== 第190話(巻15・第5話)土佐判官代通清、人違して関白殿に合奉る事 ======+====== 第190話(巻15・第5話)土佐判官代通清、人違して関白殿に合奉る事 ======
  
 **土佐判官代通清人違シテ関白殿ニ奉合事** **土佐判官代通清人違シテ関白殿ニ奉合事**
  
-**土佐判官代通清、人違して関白殿に合奉る事**+**土佐判官代通清、人違して関白殿に合奉る事**
  
-これも今はむかし、土佐判官代通清といふもの有けり。歌をよみ、源氏、狭衣などをうかべ、花の下、月の前とすきありきけり。+===== 校訂本文 =====
  
-かかるすき物なば、後徳大寺左大臣、「大内の花みんずるに、かならず」といざなれければ、通清、「目出き事にあひたり」思て、やがて破車にりて行程に、とよ車二三ばかして人のくればたがひなき此左大臣おはする」と思て簾をかきあげて、「あなうたて、あなうたて。とくとくおはせ」と扇を開てまねきけり。+も今土佐判官代通清((源通清))いふものあり。歌を読み源氏((源氏物語))・狭衣((狭衣物語))などをかべ前と好歩(り)きけり。
  
-はやう関白殿のへおはしますなりけり。まねくをみて御ともの随身馬をはしらせてかけよせて車の尻の簾をかりおとしてけり其時通清あはてさは前よりまろおちける程に烏帽子落にけりいといと不便なりけりとか+かかる数寄者(すきもの)なれば、後徳大寺左大臣((藤原実定))、「大内の花見んずるに、必ず」といざなれければ、通清、「めでたきことにあひたり」と思ひて、がて破車(やれぐるま)に乗りて行くほどに、あとより車二つ三つばかりして人の来れば、「疑ひなき、この左大臣のおはする」と思ひて、尻の簾(すだれ)をかき上げて、「あなたて、あなうたて。とくとくおはせ」と扇を開きて招きけり。 
 + 
 +はやう、関白殿のものへおはしますなりけり。招くを見て、御供の随身、馬を走らせて、駆け寄せて、車の尻の簾をかり落してけり。その時、通清、あはて騒ぎて、前よりまろび落ちけるほどに、烏帽子落ちにけり。いといと不便なりけりとか。 
 + 
 +好きぬる者は、少しをこにもありけるにや。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今はむかし土佐判官代通清といふもの有けり哥をよみ 
 +  源氏狭衣なとをうかへ花の下月の前とすきありきけり 
 +  かかるすき物なれは後徳大寺左大臣大内の花みんするにかならすと 
 +  いさなはれけれは通清目出き事にあひたりと思てやかて破車に 
 +  のりて行程にあとより車二三はかりして人のくれはうたかひなき 
 +  此左大臣のおはすると思て尻の簾をかきあけてあなうたてあなうたて/下102オy457 
 + 
 +  とくとくおはせと扇を開てまねきけりはやう関白殿の物へお 
 +  はしますなりけりまねくをみて御ともの随身馬をはしらせて 
 +  かけよせて車の尻の簾をかりおとしてけり其時通清あは 
 +  てさはて前よりまろおちける程に烏帽子落にけりいと 
 +  いと不便なりけりとかすきぬる物はすこしおこにもありけるにや/下102ウy458
  
-すきぬる物は、すこしおこにもありけるにや。 
text/yomeiuji/uji190.txt · 最終更新: 2019/12/03 23:24 by Satoshi Nakagawa