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text:yomeiuji:uji188 [2014/10/13 13:42] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji188 [2019/12/02 22:46] (現在) Satoshi Nakagawa
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 宇治拾遺物語 宇治拾遺物語
-====== 第188話(巻15・第3話)賀茂祭の帰さ、武正兼行御覧の事 ======+====== 第188話(巻15・第3話)賀茂祭の帰さ、武正兼行御覧の事 ======
  
 **賀茂祭帰サ武正兼行御覧事** **賀茂祭帰サ武正兼行御覧事**
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 **賀茂祭の帰さ、武正兼行御覧の事** **賀茂祭の帰さ、武正兼行御覧の事**
  
-これも今はむかし、賀茂祭のともに、下野武正、秦兼行つかはしたりけり。そのかへさ、法性寺殿、紫野にて御覧じけるに、武正兼行、殿下御覧ずとりて、ことに引つくろひて渡りけり。武正、ことに気色してわたる。次に兼行、又わたる。おのおの、とりどりにいひしらす+===== 校訂本文 ===== 
 + 
 +これも今は、賀茂祭のともに、下野武正、秦兼行つかはしたりけり。その帰(かへ)さ、法性寺殿((藤原忠通))、紫野にて御覧じけるに、武正兼行、殿下御覧ずとりて、ことに引つくろひて渡りけり。武正、ことに気色(きしよく)してる。次に兼行、る。おのおの、とりどりに言ひ知らず。 
 + 
 +殿、御覧じて、「今一度、北へ渡れ」と仰せありければ、また北へ渡りぬ。さて、あるべきならねば、また南へ帰り渡るに、このたびは、兼行、先に南へ渡りぬ。「次に武正渡らんずらん」と、人々待つほどに、武正、やや久しく見えず。「こはいかに」と思ふほどに、向ひに引きたる幔(まん)より、東を渡るなりけり。「いかに、いかに」と待ちけるに、幔の上より冠の巾子(こじ)ばかり見えて、南へ渡りたりけるを、人々、「なほ、ずちなきものの心際(こころぎは)なり」となん讃めけりとか。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今はむかし賀茂祭のともに下野武正秦兼行つかはし 
 +  たりけりそのかへさ法性寺殿紫野にて御覧しけるに武正兼 
 +  行殿下御覧すとしりてことに引つくろひて渡りけり武正 
 +  ことに気色してわたる次に兼行又わたるおのおのとりとりに/下100オy453 
 + 
 +  いひしらす殿御覧して今一度北へわたれと仰ありけれは又北へ 
 +  わたりぬさてあるへきならねは又南へ帰わたるに此たひは兼行さきに 
 +  南へわたりぬ次に武正わたらんすらんと人々まつ程に武正やや 
 +  久しくみえすこはいかにとおもふ程にむかひに引たる幔より東を 
 +  わたるなりけりいかにいかにと待けるに幔の上より冠のこし斗みえて 
 +  南へわたりたりけるを人々猶すちなきものの心きはなりとなん 
 +  ほめけりとか/下100ウy454
  
-殿、御覧じて、「今一度北へわたれ」と仰ありければ、又、北へわたりぬ。さて、あるべきならねば、又南へ帰わたるに、此たびは、兼行さきに南へわたりぬ。「次に武正わたらんずらん」と人々まつ程に、武正、やや久しくみえず。「こはいかに。こはいかに」と、待けるに、むかひに引たる幔より東をわたるなりけり。「いかに、いかに」と待けるに、幔の上より冠のこじ斗みえて、南へわたりたりけるを、人々、「猶、ずちなきものの心ぎはなり」となんほめけりとか。 
text/yomeiuji/uji188.txt · 最終更新: 2019/12/02 22:46 by Satoshi Nakagawa