text:yomeiuji:uji160
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text:yomeiuji:uji160 [2014/10/12 02:17] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji160 [2019/10/26 01:16] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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行 6: | 行 6: | ||
**一条桟敷屋の鬼の事** | **一条桟敷屋の鬼の事** | ||
- | 今はむかし、一条の桟敷屋に、或男とまりて、傾城とふしたりけるに、夜中斗に、風吹雨降てすさまじかりけるに、大路に、「諸行無常」と詠じて過る物あり。 | + | ===== 校訂本文 ===== |
- | 「なに物ならん」とおもひて、蔀をすこしをしあげてみければ、長は軒とひとしくて、馬の頭なる鬼なりけり。おそろしさに、しとみをかけて、おくのかたへいりたれば、此鬼、格子をしあげて、顔をし入て、「よく御覧じつるな、よく御覧じつるな」と申ければ、太刀を抜て、「いらば切ん」とかまへて、女をばそばにをきて待けるに、「よくよく御覧ぜよ」といひていにけり。「百鬼夜行にてあるやらん」とおそろしかりけり。 | + | 今は昔、一条の桟敷屋に、ある男泊まりて、傾城と臥したりけるに、夜中ばかりに、風吹き雨降りてすさまじかりけるに、大路に、「諸行無常」と詠じて過ぐるものあり。 |
+ | |||
+ | 「なにものならん」と思ひて、蔀(しとみ)を少し押し上げて見ければ、長(たけ)は軒と等しくて、馬の頭なる鬼なりけり。恐ろしさに、蔀をかけて、奥の方へ入りたれば、この鬼、格子押し開けて、顔押し入れて、「よく御覧じつるな、よく御覧じつるな」と申しければ、太刀を抜きて、「入らば切ん」とかまへて、女をばそばに置きて待りけるに、「よくよく御覧ぜよ」と言ひて去(い)にけり。「百鬼夜行にてあるやらん」と恐しかりけり。 | ||
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+ | それより一条の桟敷屋には、またも泊まらざりけるとなん。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | 今はむかし一条の桟敷屋に或男とまりて傾城とふしたり | ||
+ | けるに夜中斗に風吹雨降てすさましかりけるに大路に諸行無常と/下65ウy384 | ||
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+ | 詠して過る物ありなに物ならんとおもひて蔀をすこしをし | ||
+ | あけてみけれは長は軒とひとしくて馬の頭なる鬼なりけり | ||
+ | | ||
+ | あけて顔をし入てよく御覧しつるなよく御覧しつるなと申けれは太刀を | ||
+ | 抜ていらは切んとかまへて女をはそはにをきて待けるによくよく | ||
+ | 御覧せよといひていにけり百鬼夜行にてあるやらんとおそろし | ||
+ | かりけりそれより一条のさしき屋には又もとまらさりけるとなん/下66オy385 | ||
- | それより一条のさじき屋には、又もとまらざりけるとなん。 |
text/yomeiuji/uji160.1413047878.txt.gz · 最終更新: 2014/10/12 02:17 by Satoshi Nakagawa