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宇治拾遺物語

第160話(巻12・第24話)一条桟敷屋の鬼の事

一条桟敷屋鬼事

一条桟敷屋の鬼の事

今はむかし、一条の桟敷屋に、或男とまりて、傾城とふしたりけるに、夜中斗に、風吹雨降てすさまじかりけるに、大路に、「諸行無常」と詠じて過る物あり。

「なに物ならん」とおもひて、蔀をすこしをしあげてみければ、長は軒とひとしくて、馬の頭なる鬼なりけり。おそろしさに、しとみをかけて、おくのかたへいりたれば、此鬼、格子をしあげて、顔をし入て、「よく御覧じつるな、よく御覧じつるな」と申ければ、太刀を抜て、「いらば切ん」とかまへて、女をばそばにをきて待けるに、「よくよく御覧ぜよ」といひていにけり。「百鬼夜行にてあるやらん」とおそろしかりけり。

それより一条のさじき屋には、又もとまらざりけるとなん。

text/yomeiuji/uji160.1413047878.txt.gz · 最終更新: 2014/10/12 02:17 by Satoshi Nakagawa