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text:yomeiuji:uji160 [2014/04/18 18:56] – 作成 Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji160 [2019/10/26 01:16] (現在) Satoshi Nakagawa
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 +宇治拾遺物語
 ====== 第160話(巻12・第24話)一条桟敷屋の鬼の事 ====== ====== 第160話(巻12・第24話)一条桟敷屋の鬼の事 ======
  
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 **一条桟敷屋の鬼の事** **一条桟敷屋の鬼の事**
  
-今はむかし、一条の桟敷屋に、或男とまりて、傾城とふしたりけるに、夜中斗に、風吹雨降てすさまじかりけるに、大路に、「諸行無常」と詠じて過る物あり。+===== 校訂本文 =====
  
-「なにならん」とおもひて、蔀をすこしをしげてければ、長は軒とひとしくて、馬の頭なる鬼なりけり。おそろしさに、しとみをかけて、おくかたりたれば、鬼、格子あげて、顔し入て、「よく御覧じつるな、よく御覧じつるな」と申ければ、太刀を抜て、「らば切ん」とかまへて、女をばそばにきて待けるに、「よくよく御覧ぜよ」とひていにけり。「百鬼夜行にてあるやらん」とおそろしかりけり+今は昔、一条の桟敷屋に、ある男泊まりて、傾城と臥したりけるに、夜中ばかりに、風吹き雨降りてすさまじかりけるに、大路に、「諸行無常」と詠じて過ぐるものあり。 
 + 
 +「なにものならん」とひて、蔀(とみ)押し上げてければ、長(たけ)は軒としくて、馬の頭なる鬼なりけり。ろしさに、をかけて、りたれば、この鬼、格子開けて、顔し入て、「よく御覧じつるな、よく御覧じつるな」と申ければ、太刀を抜て、「らば切ん」とかまへて、女をばそばにきて待けるに、「よくよく御覧ぜよ」とひて去()にけり。「百鬼夜行にてあるやらん」と恐しかりけり。 
 + 
 +それより一条の桟敷屋には、またも泊まらざりけるとなん。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  今はむかし一条の桟敷屋に或男とまりて傾城とふしたり 
 +  けるに夜中斗に風吹雨降てすさましかりけるに大路に諸行無常と/下65ウy384 
 + 
 +  詠して過る物ありなに物ならんとおもひて蔀をすこしをし 
 +  あけてみけれは長は軒とひとしくて馬の頭なる鬼なりけり 
 +  おそろしさにしとみをけておくのかたへいたれは此鬼格子をし 
 +  あけて顔をし入てよく御覧しつるなよく御覧しつるなと申けれは太刀を 
 +  抜ていらは切んとかまへて女をはそはにをきて待けるによくよく 
 +  御覧せよといひていにけり百鬼夜行にてあるやらんとおそろし 
 +  かりけりそれより一条のさしき屋には又もとまらさりけるとなん/下66オy385
  
-それより一条のさじき屋には、又もとまらざりけるとなん。 
text/yomeiuji/uji160.txt · 最終更新: 2019/10/26 01:16 by Satoshi Nakagawa