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text:yomeiuji:uji127 [2014/10/11 01:42] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji127 [2019/04/29 15:59] (現在) Satoshi Nakagawa
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 宇治拾遺物語 宇治拾遺物語
-====== 第127話(巻11・第3付話)付、晴明、蛙を殺す事 ======+====== 第127話(巻11・第3付話)晴明、蛙を殺す事 ======
  
 **晴明ヲ心見僧事(付晴明殺蛙事)** **晴明ヲ心見僧事(付晴明殺蛙事)**
  
-**付、晴明、蛙を殺す事**+** 晴明、蛙を殺す事**
  
-晴明、ある時、広沢僧正の御坊にまいりて、うけ給はりけるあいだ、若僧どものはれあきにふやう、「式神をつかひ給なるは、たちまちに人をころし給や」とひければ、「やすくはえころさじ。力を入てこしてん」とふ。+この晴明((安倍晴明。[[uji126|前話]]の続き。))、ある時、広沢僧正((寛朝))の御坊にりて、ものし承りける、若僧どもの晴明(はれあきら)ふやう、「式神を使ひ給なるは、たちまちに人をし給や」とひければ、「やすくはえさじ。力を入殺してん」と言ふ。「さて、虫なんどをば、少しのとせんに、必ず殺つべし。さ、生くるやうを知らねば、罪を得つべければ、さやうのこと、よしなし」と言ふほどに、庭に蛙(かへる)の出で来て、五・六ばかりをどりて、池の方ざまへ行きけるを、「あれ一つ、さらば殺し給へ。心みん」と、僧の言ひければ、「罪を作り給御房かな。されども、心み給へば、殺して見せ奉らん」とて、草の葉を摘み切りて、物を読むやうにして、蛙の方へ投げやりければ、その草の葉の、蛙の上にかかりければ、蛙ま平(ひら)にひしげて死にたりけり。これを見て、僧どもの色変りて、「恐し」と思ひけり
  
-さて虫なんば、すこしの事せんにかならころしつさていくるやうをしらねば、罪をえつければ、さやうの事よしなしといふ程に庭に蛙のいきて五六かりおりて池のかたまへ行けるを、「あれひとつさらころし給へ心みんと僧のいひければ、「罪をつくり給御房かなされ心み給へば、殺してみせ奉んとて草の葉をつみきりて物をよむやうにしてかへるのかたへなやりければ、その草の葉の蛙のうへにかかりければ、かへるまひらにひして死たりけりこれをみて僧もの色かはりて、「おそろしと思けり+家の中に人なき折は、この式神を使ひけるにや、人もなきに、蔀(しとみ)を上げ下ろし、門を差しなどしけり。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  此晴明ある時広沢僧正の御坊にまいりて物申うけ給はり 
 +  けるあいた若僧とものはれあきらにいふやう式神をつかひ給 
 +  なるはたちまちに人をころし給やといひけれはやすくはえ 
 +  ころさし力を入てころしてんといふさて虫なんすこし 
 +  の事せんにかならころしつしさていくるやうをしらねは 
 +  罪をえつけれさやうの事よしなしといふ程に庭に 
 +  蛙のいきて五六かりおりて池のかたまへ行けるを 
 +  あれひとつさらころし給へ心みんと僧のいひけれ罪をつ 
 +  くり給御房かなされも心み給へ殺してみせ奉んとて草の 
 +  葉をつみきりて物をよむやうにしてかへるのかたへなやりけ/下39オy331 
 + 
 +  その草の葉の蛙のうへにかかりけれかへるまひらにひし 
 +  けて死たりけりこれをみて僧もの色かはりておそろしと 
 +  思けり家の中に人なきおりはこのしき神をつかひけるにや人も 
 +  なきに蔀を上おろし門をさしなとしけり/下39ウy332
  
-家の中に人なきおりは、このしき神をつかひけるにや、人もなきに蔀を上おろし門をさしなどしけり。 
text/yomeiuji/uji127.txt · 最終更新: 2019/04/29 15:59 by Satoshi Nakagawa