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text:yomeiuji:uji097 [2014/10/06 22:18] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji097 [2015/03/30 18:02] – [第97話(巻7・第6話)小野宮の大饗の事(付、西宮殿富小路大臣等・・・] Satoshi Nakagawa
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 中嶋に大に木たかき松一本たてりけり。その松をみとみる人、「藤のかかりたりましかば」とのみみつついひければ、この大饗の日はむ月の事なれども、藤の花いみじくおかしくつくりて、松の木すゑよりひまなうかけられたるが、時ならぬ物はすさまじきに、これは空のくもりて雨のそぼふるに、いみじくめでたうおかしうみゆ。いけのおもてに影のうつりて風のふけば、水のうへもひとつになびきたる。「まことに藤浪といふ事はこれをいふにやあらん」とぞみえける。 中嶋に大に木たかき松一本たてりけり。その松をみとみる人、「藤のかかりたりましかば」とのみみつついひければ、この大饗の日はむ月の事なれども、藤の花いみじくおかしくつくりて、松の木すゑよりひまなうかけられたるが、時ならぬ物はすさまじきに、これは空のくもりて雨のそぼふるに、いみじくめでたうおかしうみゆ。いけのおもてに影のうつりて風のふけば、水のうへもひとつになびきたる。「まことに藤浪といふ事はこれをいふにやあらん」とぞみえける。
  
-又、後の日、富小路のおとどの大饗に、御家のあやしくて、所々のしちらひもわりなくかまへてありければ、人々、「みぐるしき大饗かな」と思たりけるに、日暮て、事やうやうはてがたになるに、引出物の時になりて、東の廊のまへに曳きたる幕のうちに、引出物の馬を引立てありけるが、幕のうちながらいななきたりけるこゑ、空をひびかしけるを、人々、「いみじき馬の声かな」とききける程に、幕柱を蹴折て、口とりをひきさげていでくるをみれば、黒栗毛なるうまの、たけ八きあまりばかりなる、ひらにみゆるまで身ふとく肥たる、かいこみかみなれば、額のもち月のやうにてしろくみえければ、見てほめののしりけるこゑ、かしがましきまでなんきこえける。馬のふるまゐ、おもだち、尾さし足つきなどの、ここはとみゆる所なく、つきづきしかりければ、家のしちらひのみぐるしかりつるもきえて、めでたうなんありける。+又、後の日、富小路のおとどの大饗に、御家のあやしくて、所々のしちらひもわりなくかまへてありければ、人々、「みぐるしき大饗かな」と思たりけるに、日暮て、事やうやうはてがたになるに、引出物の時になりて、東の廊のまへに曳きたる幕のうちに、引出物の馬を引立てありけるが、幕のうちながらいななきたりけるこゑ、空をひびかしけるを、人々、「いみじき馬の声かな」とききける程に、幕柱を蹴折て、口とりをひきさげていでくるをみれば、黒栗毛なるの、たけ八きあまりばかりなる、ひらにみゆるまで身ふとく肥たる、かいこみかみなれば、額のもち月のやうにてしろくみえければ、見てほめののしりけるこゑ、かしがましきまでなんきこえける。馬のふるまゐ、おもだち、尾さし足つきなどの、ここはとみゆる所なく、つきづきしかりければ、家のしちらひのみぐるしかりつるもきえて、めでたうなんありける。
  
 さて、世のすゑまでもかたりつたふる也けり。 さて、世のすゑまでもかたりつたふる也けり。
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text/yomeiuji/uji097.txt · 最終更新: 2018/09/25 15:20 by Satoshi Nakagawa