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text:yomeiuji:uji094 [2015/03/22 03:42]
Satoshi Nakagawa [第94話(巻7・第3話)三条中納言、水飯の事]
text:yomeiuji:uji094 [2018/08/11 16:54] (現在)
Satoshi Nakagawa
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 **三条中納言、水飯の事** **三条中納言、水飯の事**
  
-これも今はむかし、三条中納言といふ人ありけり。三条右大臣の御子なり。才かしこくて、もろこしの事、この世の事、みなしり給へり。心ばへかしこく、きもふとく、をしからだちてなんおはしける。笙のふえをなん、きはめて吹給ける。長たかく大にふとりてなんおはしける。+===== 校訂本文 =====
  
-とりのあま、せめてくるきまで肥給ければ、すししげひでをよびて、「かくいみじうふるをばいかがせんする。立居などするが身のをもくいじうくるしきなり」との給ば、重秀申やう「冬湯づけ、水漬にて物をすべなり」と申けり。+これも今は昔、三条中納言((藤原朝成))いふ人あけり。三条右大臣((藤原定方))御子な。才かくて、唐土(もろこし)のこと、この世のこと、みなり給へり。心へかしこく肝(きも)太くおしからだちてなんおる。笙の笛をなんはめて吹給ひる。たけ高く大きに太てなんおはしける
  
-のままにめしけれど、おなじやうにこへふとり給ければ、せんかたなくて、又重秀をめして、「いひしままにど、のしるしもし。水飯食てみせん」との給おのこどもめに、さぶらひ一人まいりたれば、「例のやうに水飯してもてこ」といればしばし斗あり、御台もてまいるみれば、御だい、かたよろひもてて御前にすへつ。御だいに箸のだいばかすへたり。+太りり、せて苦きまで肥えければ、医師重秀(くすししげひで)呼びて、「かくみじう太るをば、いかがせんとる。立ち居なするが重く、いみじう苦」との給へば重秀、申やう、「湯漬け、夏は水漬けに召すべ」と申しけり。
  
-つづきて御盤ささげている。御まかないの台にすふるをみ御盤に、ろき干瓜三寸ばかりに切て、十斗もりたり。又すしあゆおせくぐひろらかなるが、しりかばかりををして、卅斗もりたり。+そのままに召しけれど、同じやうに肥え太り給ひければ、せんくて、また重秀を召して、「言ひしままにすれのしるしもなし。水飯食ひて見せん」とのたまひて、をのこど召すに、侍(さぶらひ)一人参りたれば「例やう水飯して持(も)て来(こ)」と言はれければ、ししばかりありて、御台持て参る見れば、御台、片具(かたよろひ)持て来て、御前に据ゑつ。御台に箸の台ばか据ゑたり。
  
-大なるかなまりぐしたり。みなすへたり。一人の侍大なる銀銀のいをたてて、をもたげにもまいりたり。+続きて御盤ささげて参。御まかないの、台に据うる見れば、中の、白き干瓜、三寸ばかりに切りて、十ばかり盛りたり。ま鮨鮎(すしあゆ)おせぐく広らなるが尻頭(しりかしら)ばかり押し、三十ばかり盛りたり。
  
-金鞠を給たれば、いに御ものをすくひつつ、高やかにもあげて、そばに水すこ入てまいらせたり。殿、だいをひきよせ給て、かまりをとらせ給へる、さばか大におはする殿御手に大なるかなまかな」とみゆるは、けしうはあらぬほどなるべし+大きなる鋺(なま)したり。御台据ゑた。いま一人、大なる銀の提(ひさげ)に銀の匙(ひ)を立てて、重たげに持て参りたり。
  
-ほしうり三きり斗くきりて五六ばりまいりぬ。次二きり斗に食切て五六斗すらかにまいぬ。次に水を引せて、二たび斗はしまはしふとみに、おみなうせぬ。」と+たれば匙(ひ)御物すくひつつやかに上げて、そばに水を少し入れて参らせたり。殿、台を引き寄給ひて、取らせるに、さばかり大にはする殿御手に、大きなる鋺かな」と見ゆるはあらぬほどなるべし
  
-さて二三度にひさげの物みなになれば、、提に入てもてまいる。重秀こをみ、「水飯をやくとめすとも、このぢやうにめさば、さらに御ふとりなをるべきにあらず」と、逃ていにけり+干瓜を三切りばかり食ひ切りて、五・六ばかりまいりぬ。次に鮎を二切りばかりに食ひ切て、五つ六つばかり、やすらかに参りぬ。次に水飯を引き寄せて、二度(ふたたび)ばかり箸を回し給ふと見るほどに、おものみな失せぬ。「また」とて、さし給はす。さて二三度に、提(ひさげ)の物みなになれば、また、提に入れて参る
  
-されば、いよいよ相撲などのやうにてぞおはしける。+重秀、これを見て、「水飯を役と召すとも、このぢやうに召さば、さらに御太り治るべきにあらず」とて、逃げて去にけり。 
 + 
 +されば、いよいよ相撲(すまひ)などのやうにてぞおはしける。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今はむかし三条中納言といふ人ありけり三条右大臣の 
 +  御子なり才かしこくてもろこしの事この世の事みなしり 
 +  給へり心はへかしこくきもふとくをしからたちてなんおはしける 
 +  笙のふえをなんきはめて吹給ける長たかく大にふとりてなん 
 +  おはしけるふとりのあまりせめてくるしきまて肥給けれはく 
 +  すししけひてをよひてかくいみしうふとるをはいかかせんとする 
 +  立居なとするか身のをもくいみしうくるしきなりとの給は重 
 +  秀申やう冬は湯つけ夏は水漬にて物をめすへきなりと申 
 +  けりそのままにめしけれとおなしやうにこへふとり給けれはせんかた 
 +  なくて又重秀をめしていひしままにすれとそのしるしもなし水 
 +  飯食てみせんとの給ておのこともめすにさふらひ一人まいりたれは例 
 +  のやうに水飯してもてこ」といはれけれはしはし斗ありて御台もて 
 +  まいるをみれは御たいかたよろひもてきて御前にすへつ御たいに/103ウy210 
 + 
 +  箸のたいはかりすへたりつつきて御盤ささけてまいる御まかな 
 +  いの台にすふるをみれは中の御盤にしろき干瓜三寸はかりに 
 +  切て十斗もりたり又すしあゆのおせくくにひろらかなるかし 
 +  りかしらはかりををして卅斗もりたり大なるかなまりをくし 
 +  たりみな御台にすへたりいま一人の侍大なる銀の提に 
 +  銀のかいをたててをもたけにもてまいりたり金鞠を給たれ 
 +  はかいに御ものをすくひつつ高やかにもりあけてそはに水を 
 +  すこし入てまいらせたり殿たいをひきよせ給てかなまりをとらせ 
 +  給へるにさはかり大におはする殿の御手に大なるかなまりかなと 
 +  みゆるはけしうはあらぬほとなるへしほしうりを三きり斗くひ 
 +  きりて五六はかりまいりぬ次に鮎を二きり斗に食切て五六 
 +  斗やすらかにまいりぬ次に水飯を引よせて二たひ斗はしをまはし給ふ 
 +  とみる程におものみなうせぬ又とてさし給はすさて二三度に/104オy211 
 + 
 +  ひさけの物みなになれは又提に入てもてまいる重秀これ 
 +  をみて水飯をやくとめすともこのちやうにめさはさらに 
 +  御ふとりなをるへきにあらすとて逃ていにけりされはいよいよ相 
 +  撲なとのやうにてそおはしける/104ウy212
  
text/yomeiuji/uji094.txt · 最終更新: 2018/08/11 16:54 by Satoshi Nakagawa
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