text:yomeiuji:uji079
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:yomeiuji:uji079 [2014/04/10 01:40] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji079 [2018/05/10 00:47] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
- | ====== 第79話(巻5・第10話)或僧、人の許にて、氷魚盗み食たる事 ====== | + | 宇治拾遺物語 |
+ | ====== 第79話(巻5・第10話)或僧、人の許にて、氷魚盗み食ひたる事 ====== | ||
**或僧人ノ許ニテ氷魚盗食タル事** | **或僧人ノ許ニテ氷魚盗食タル事** | ||
- | **或僧、人の許にて、氷魚盗み食たる事** | + | **或僧、人の許にて、氷魚盗み食ひたる事** |
- | これも今はむかし、ある僧、人のもとへいきけり。 | + | ===== 校訂本文 ===== |
+ | |||
+ | これも今は昔、ある僧、人のもとへ行きけり。酒など勧めけるに、氷魚((「ひを」。鮎の稚魚を指す。))、はじめて出で来たりければ、主(あるじ)、めづらしく思ひて、もてなしけり。 | ||
+ | |||
+ | 主、用(よう)のことありて、内へ入りて、また出でたりけるに、この氷魚、ことのほかに少なくなりたりければ、主、「いかに」と思へども、言ふべきやうもなかりければ、物語し居たりけるほどに、この僧の鼻より、氷魚の一つ、ふと出でたりければ、主、怪しう思えて、「その御鼻より氷魚の出でたるは、いかなることにか」と言ひければ、とりもあへず、「このごろの氷魚は、目鼻より降り候ふなるぞ」と言ひたりければ、人みな、「は」と笑ひけり。 | ||
+ | |||
+ | ===== 翻刻 ===== | ||
+ | |||
+ | これも今はむかしある僧人のもとへいきけり酒なとすすめける | ||
+ | に氷魚はしめていてきたりけれはあるしめつらしく思ひて | ||
+ | もてなしけりあるしようの事ありて内へ入て又いてたりける | ||
+ | にこの氷魚ことのほかにすくなく成たりけれはあるしいかにと | ||
+ | おもへともいふへきやうもなかりけれは物かたりしゐたりける程に/83ウy170 | ||
+ | |||
+ | この僧の鼻より氷魚の一ふといてたりけれはあるしあやし | ||
+ | うおほえてその御はなよりひをの出たるはいかなる事にかといひ | ||
+ | けれはとりもあへすこの比の氷魚は目鼻よりふり候なる | ||
+ | そといひたりけれは人みなはとわらひけり/84オy171 | ||
- | 酒などすすめけるに、氷魚、はじめていできたりければ、あるじめづらしく思ひてもてなしけり。あるじ、ようの事ありて、内へ入て、又いでたりけるに、この氷魚、ことのほかにすくなく成たりければ、あるじ、「いかに」とおもへども、いふべきやうもなかりければ、物がたりしゐたりける程に、この僧の鼻より、氷魚の一ふといでたりければ、あるじあやしうおぼえて、「その御はなよりひをの出たるは、いかなる事にか」といひければ、とりもあへず、「この比の氷魚は目鼻よりふり候なるぞ」といひたりければ、人みな「は」とわらひけり。 |
text/yomeiuji/uji079.txt · 最終更新: 2018/05/10 00:47 by Satoshi Nakagawa