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text:yomeiuji:uji076

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text:yomeiuji:uji076 [2014/10/05 17:37]
Satoshi Nakagawa
text:yomeiuji:uji076 [2018/04/28 20:15] (現在)
Satoshi Nakagawa
ライン 6: ライン 6:
 **仮名暦、誂へたる事** **仮名暦、誂へたる事**
  
-これも今は昔、ある人のもとに、なま女房の有けるが、人に紙乞ひて、そこなりける若き僧に、「仮名暦、書てたべ」といひければ、僧、やすき事にいひて書たりけり。+===== 校訂本文 =====
  
-じめつかたはうるはしく「神仏よし」「かんじつ日」「くゑび日」ど書たりけるが、やうやうすゑざまなりて、あるひは「物くはぬ日」どかき、これぞあれば、よくくふ日」などかきたり。+これも今ある人のもとま女房のありけるが、紙乞ひて、そこりける若僧に、「仮名暦、書きて賜べ」と言ひければ、僧、やすきことに言ひて、書きたりけり。
  
-この女房、「やうがる暦かな」とは思へども、いとかうほどには思ひよらず、「さるにこそ」と思てそのままにたがへず。+始めつ方はうるはしく、「神仏によし」「坎日(かんにち)」「凶会日(くゑにち)」など書きたりけるが、やうやう末(すゑ)ざまになりて、ある日は「物食はぬ日」など書き、また「これぞあれば、よく食ふ日」など書きたり。 
 + 
 +この女房、「やうがる暦かな」とは思へども、いとかうほどには思ひよらず、「さることにこそ」と思そのままに違(たが)へず。 
 + 
 +またある日は、「はこ((大便の意))すべからず」と書きたれば、「いかに」とは思へども、「さこそはあらめ」と思ひて、念じて過ぐすほどに、長凶会日(ながくゑにち)のやうに、「はこすべからず・はこすべからず」と続け書きたれば、二・三日までは念じ居たるほどに、おほかた耐ゆべきやうもなければ、左右の手して、尻をかかへて、「いかにせん、いかにせん」と、よぢりすぢりするほどに、ものもおぼえずしてありけるとか。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今は昔ある人のもとになま女房の有けるか人に紙こひ 
 +  てそこなりけるわかき僧に仮名暦書てたへといひけれは僧 
 +  やすき事にいひて書たりけりはしめつかたはうるはしく神 
 +  仏によしかん日くゑ日なと書たりけるかやうやうすゑさまに 
 +  なりてあるひは物くはぬ日なとかき又これそあれはよく 
 +  くふ日なとかきたりこの女房やうかる暦かなとは思へ 
 +  ともいとかうほとには思ひよらすさる事にこそと思てそのままに 
 +  たかへす又ある日ははこすへからすと書たれはいかにとは思へ 
 +  ともさこそはあらめと思てねんしてすくす程になかくゑ日 
 +  のやうにはこすへからすはこすへからすとつつけかきたれは二三日まては念しゐたる/78ウy160 
 + 
 +  程に大かたたゆへきやうもなけれは左右の手して尻をかかへて 
 +  いかにせんいかにせんとよちりすちりする程に物もおほえすして 
 +  ありけるとか/79オy161
  
-又ある日は、「はこすべからず」と書たれば、「いかに」とは思へども、「さこそはあらめ」と思てねんじてすぐす程に、ながくゑ日のやうに「はこすべからず、はこすべからず」とつづけかきたれば、二三日までは念じゐたる程に、大かたたゆべきやうもなければ、左右の手して尻をかかへて、「いかにせん、いかにせん」とよぢりすぢりする程に、物もおぼえずしてありけるとか。 


text/yomeiuji/uji076.txt · 最終更新: 2018/04/28 20:15 by Satoshi Nakagawa