text:yomeiuji:uji062
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text:yomeiuji:uji062 [2018/03/18 18:30] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji062 [2018/03/18 18:34] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | これも今は昔、民部大夫篤昌((藤原篤昌))といふ者ありけるを、法性寺殿((藤原忠通))の御時、蔵人所の所司に、よしすけとかやいふ者ありけり。件(くだん)の篤昌を役に催しけるを「われは、かやうの役にすべきものにもあらず」とて参らざりけるを、所司、小舎人をあまた付けて、苛法に催しければ、参りにけり。 | + | これも今は昔、民部大夫篤昌((藤原篤昌))といふ者ありけるを、法性寺殿((藤原忠通))の御時、蔵人所の所司に、「よしすけ」とかやいふ者ありけり。件(くだん)の篤昌を役に催しけるを「われは、かやうの役にすべきものにもあらず」とて参らざりけるを、所司、小舎人をあまた付けて、苛法に催しければ、参りにけり。 |
さて、「まづ、所司にもの申さむ」と呼びければ、出で会ひにけるに、この世ならず腹立ちて、「かやうの役に催し給ふは、いかなることぞ。まづ、篤昌をばいかなる者と知り給ひたるぞ。奉(うけたま)はらん」と、しきりに責めけれど、しばしはものも言はで居たりけるを、叱りて、「のたまへ。まづ、篤昌がありやうを奉はらん」と、いたう責めければ、「別のこと候はず。民部大夫五位の、鼻赤きにこそ、知り申したれ」と言ひたりければ、「をう」と言ひて、逃げにけり。 | さて、「まづ、所司にもの申さむ」と呼びければ、出で会ひにけるに、この世ならず腹立ちて、「かやうの役に催し給ふは、いかなることぞ。まづ、篤昌をばいかなる者と知り給ひたるぞ。奉(うけたま)はらん」と、しきりに責めけれど、しばしはものも言はで居たりけるを、叱りて、「のたまへ。まづ、篤昌がありやうを奉はらん」と、いたう責めければ、「別のこと候はず。民部大夫五位の、鼻赤きにこそ、知り申したれ」と言ひたりければ、「をう」と言ひて、逃げにけり。 | ||
- | また、この所司が居たりける前を、忠恒(ただつね)といふ随身、ことやうにて、ねり通りけるを見て、「わりある随身の姿かな」と忍びやかに言ひけるを、耳とく聞きて、随身、所司が前に立ち帰りて、「『わりある』とは、いかにのたまふことぞ」ととがめければ、「われは、人のわりのありなしも、え知らぬに、ただいま武正府生((下野武正。[[uji100]]・[[uji188]]参照))の通られつるを、この人々『わりなき者の様体(やうだい)かな』と言ひ合はれつるに、少しも似給はねば、『さてはもし、わりのおはするか』と思ひて、申したりつるなり」と言ひたりければ、忠恒、「をう」と言ひて、逃げけり。 | + | また、この所司が居たりける前を、忠恒(ただつね)といふ随身、ことやうにて、ねり通りけるを見て、「わりある随身の姿かな」と忍びやかに言ひけるを、耳とく聞きて、随身、所司が前に立ち帰りて、「『わりある』とは、いかにのたまふことぞ」ととがめければ、「われは、人のわりのありなしも、え知らぬに、ただいま武正府生((下野武正。[[uji100|100話]]・[[uji188|188話]]参照))の通られつるを、この人々『わりなき者の様体(やうだい)かな』と言ひ合はれつるに、少しも似給はねば、『さてはもし、わりのおはするか』と思ひて、申したりつるなり」と言ひたりければ、忠恒、「をう」と言ひて、逃げけり。 |
この所司をば「荒所司(あらしよし)」とぞ付けたりけるとか。 | この所司をば「荒所司(あらしよし)」とぞ付けたりけるとか。 |
text/yomeiuji/uji062.txt · 最終更新: 2018/03/18 18:34 by Satoshi Nakagawa