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text:yomeiuji:uji053 [2014/09/30 19:03] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji053 [2018/03/08 21:23] (現在) – [第53話(巻4・第1話)狐、人に付きてしとぎ食ふ事] Satoshi Nakagawa
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 **狐、人に付きてしとぎ食ふ事** **狐、人に付きてしとぎ食ふ事**
  
-むかし、物のけわづらひし所に、物のけわたし候程に、もののけ物付につきていふやう、「をのれはたたりのもののけにても侍らず。うかれてまかりとほりつる狐なり。塚屋に子どもなど侍るが、ものをほしがりつれば、かやうの所には、くひ物ちろぼうものぞかしとて、まうできつる也。しとぎばしたべてまかりなん。」といへば、しとぎをせさせて、一おしきとらせたれば、すこしくひて、「あな、むまや。あな、むまや」といふ。+===== 校訂本文 =====
  
-女の、しとぎしかりければ、そら物きて、かくふ」とにくみあへり。+むかし、物の怪(け)わづらひし所に、物の怪渡し候ふほどに、物の怪、物付きに憑きて言ふやう、おのれは、祟りの物の怪にても侍らず。うかれて、まかり通りつる狐なり。塚屋に子どもなど侍るが、物を欲しがりつれば、「かやうの所には、食ひ物、散ろぼうものぞかし」とて、詣で来つるなり。しとぎばし食べて、まかりなん。」と言へば、しとぎをせさせて、一折敷(おしき)取らせたれば、少し食ひて、「あな、むまや、むまや」と言ふ。「この女の、しとぎしかりければ、そら物きて、かくふ」とみあへり。
  
-「紙給りて、これつつみて、まかりて、たうめや子どもなどにはせん」とへば、紙を二枚ひきちがへて、つつみたれば、大きやかなるを、こしについはさみたれば、むねにさしがりてあり。+「紙給りて、これみて、まかりて、たうめや子どもなどにはせん」とへば、紙を二枚ひきちがへて、みたれば、大きやかなるを、についみたれば、にさしがりてあり。
  
-かくて「ひ給へ。まかりなん」と験者にへば、「へ」とへば、立がりてたうれしぬ。しばしありて、やがて、がりたるに、ふところなる物さらにし。+かくて「ひ給へ。まかりなん」と験者にへば、「、追へ」とへば、立ち上がりて、倒(たう)しぬ。 
 + 
 +しばしばかりありて、やがて、がりたるに、懐(ふところ)なる物さらにし。 
 + 
 +失せにけるこそ、不思議なれ。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  むかし物のけわつらひし所に物のけわたし候程にもののけ 
 +  物付につきていふやうをのれはたたりのもののけにても侍らす 
 +  うかれてまかりとほりつる狐なり塚屋に子ともなと侍るかもの 
 +  をほしかりつれはかやうの所にはくひ物ちろほうものそかし 
 +  とてまうてきつる也しときはしたへてまかりなんといへは 
 +  しときをせさせて一おしきとらせたれはすこしくひてあな 
 +  むまやあなむまやといふ此女のしときほしかりけれはそら物つきてかく 
 +  いふとにくみあへり紙給りてこれつつみてまかりてたうめや 
 +  子ともなとにくはせんといへは紙を二枚ひきちかへてつつみ 
 +  たれは大きやかなるをこしについはさみたれはむねにさし 
 +  あかりてありかくてをひ給へまかりなんと験者にいへはをへをへと/61オ 
 + 
 +  いへは立あかりてたうれふしぬしはし斗ありてやかておき 
 +  あかりたるにふところなる物さらになしうせにけるこそふしき 
 +  なれ/61ウy126
  
-うせにけるこそ、ふしぎなれ。 
text/yomeiuji/uji053.txt · 最終更新: 2018/03/08 21:23 by Satoshi Nakagawa