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text:yomeiuji:uji053 [2014/09/30 19:03] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji053 [2018/02/12 18:14] Satoshi Nakagawa
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 **狐、人に付きてしとぎ食ふ事** **狐、人に付きてしとぎ食ふ事**
  
-むかし、物のけわづらひし所に、物のけわたし候に、のけ物付にきてふやう、「のれはたたりののけにても侍らず。うかれてまかりとほりつる狐なり。塚屋に子どもなど侍るが、ものしがりつれば、かやうの所には、ひ物ろぼうものぞかしとて、まうつる。しとぎばしべてまかりなん。」とへば、しとぎをせさせて、一おしきらせたれば、すこひて、「あな、むまや。あな、むまや」とふ。+むかし、物の怪()わづらひし所に、物の怪渡し候ふほどに、怪、物付きてふやう、「のれは、祟りのにても侍らず。うかれてまかりりつる狐なり。塚屋に子どもなど侍るが、しがりつれば、かやうの所には、ひ物、散ろぼうものぞかしとて、つるなり。しとぎばしべてまかりなん。」とへば、しとぎをせさせて、一折敷(おしき)取らせたれば、ひて、「あな、むまや、むまや」と。「この女の、しとぎ欲しかりければ、そら物憑きて、かく言ふ」と憎みあへり
  
-此女のしとぎほしかりければ、そら物つきて、かくいふ」とみあり。+紙給はりてこれ包みて、まかりて、たうめや、子どもなどに食はせん」と言へば、紙を二枚、ひちがへて、包みたれば、大きやなるを、腰つい挟たれば、胸にさし上がりてあり。
  
-紙、りて、これつつみて、まかりて、たうめや。子どもどにくはせん」とへば、紙を二枚ひきちがつつみたれば、大きやかなるをこしについはさみたれば、むねにさあがりてあり+かくて追ひへ。まかりなん」と験者に言へば、「追へ、追へ」と言へば、立ち上がりて倒(う)
  
-かくてをひ給へまかりなん験者にいへば、「をへをへといへば、立ありてたうれふしぬし斗ありておきありたるにふところなる物さらになし+しばしばかりありて、やがて、起き上がりたるに、懐(ふところ)なる物、さらに無し。 
 + 
 +失せにけるこそ、不思議なれ。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  むかし物のけわつらひし所に物のけわたし候程にもののけ 
 +  物付につきていふやうをのれはたたりのもののけにても侍らす 
 +  うかれてまかりとほりつる狐なり塚屋に子ともなと侍るかもの 
 +  をほしかりつれはかやうの所にはくひ物ちろほうものそかし 
 +  とてまうてきつる也しときはしたへてまかりなんといへは 
 +  しときをせさせて一おしきとらせたれはすこしくひてあな 
 +  むまやあなむまやといふ此女のしときほしかりけれはそら物つきてかく 
 +  いふとにくみあへり紙給りてこれつつみてまかりてたうめや 
 +  子ともなとにくはせんといへは紙を二枚ひきちかへてつつみ 
 +  たれは大きやかなるをこしについはさみたれはむねにさし 
 +  あかりてありかくてをひ給へまかりなんと験者にいへをへをへと/61オ 
 + 
 +  いへ立ありてたうれふしぬしし斗ありてやておき 
 +  りたるにふところなる物さらになしうせにけるこそふしき 
 +  なれ/61ウy126
  
-うせにけるこそ、ふしぎなれ。 
text/yomeiuji/uji053.txt · 最終更新: 2018/03/08 21:23 by Satoshi Nakagawa