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text:yomeiuji:uji052 [2014/09/30 19:01] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji052 [2018/02/12 14:14] Satoshi Nakagawa
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 宇治拾遺物語 宇治拾遺物語
-====== 第52話(巻3・第20話)狐、家に火付く事 ======+====== 第52話(巻3・第20話)狐、家に火付く事 ======
  
 **狐家ニ火付事** **狐家ニ火付事**
  
-**狐、家に火付事**+**狐、家に火付くる事**
  
-今はむかし、甲斐国にたちの侍なりけるものの、夕れに舘をでて、家ざまに行けるに、道に狐のひたりけるを、追かけて引目してければ、狐の腰に射ててけり。狐、まろばされて、鳴わびて、こしを引つつ草に入にけ。此男、ひきべをとりて行程に、この狐、腰をひきてさきにたちて行に、「又いん」とすれば、失にけり。+今は、甲斐国に、館(たち)の侍なりけるの、夕れに舘をでて、家ざまに行けるに、道に狐のひたりけるを、追かけて、蟇目((底本「引目」))してければ、狐の腰に射ててけり。狐、まろばされて、鳴わびて、を引つつ草に入りにけり。
  
-家、いま四五町とえて行に、狐二町ちて、火をくはへて走ければ、「火をくはへてはしるは、いかなるぞ」とて、馬をもはしらせけれども、家のもとに走りて、人になりて、火を家にけてけり。「人のくるにこそありけれ」とて、矢をはげて走らせけれども、ててければ、狐にて草の中にはしり入て失にけり。さて、家焼にけり。+この男、蟇目(ひきべ)を取りて行くほどに、この狐、腰を引きて、先に立ちて行くに、「また射ん」とすれば、失せにけり。 
 + 
 +家、いま四五町とえて行くほどに、この二町ばかりちて、火をくはへて走ければ、「火をくはへてるは、いかなることぞ」とて、馬をもらせけれども、家のもとに走り寄りて、人になりて、火を家にけてけり。 
 + 
 +「人のくるにこそありけれ」とて、矢をはげて走らせけれども、ててければ、狐になり草の中にり入にけり。さて、家にけり。 
 + 
 +かかる物も、たちまちに、仇(あた)を報ふなり。これを聞きて、かやうの物をば、かまへて調(てう)ずまじきなり。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  今はむかし甲斐国にたちの侍なりけるものの夕くれに舘を 
 +  いてて家さまに行けるに道に狐のあひたりけるを追かけて 
 +  引目していけれは狐の腰に射あててけり狐いまろはされて鳴 
 +  わひてこしを引つつ草に入にけり此男ひきへをとりて行 
 +  程にこの狐腰をひきてさきにたちて行に又いんとすれは 
 +  失にけり家いま四五町とみえて行程に此狐二町斗先 
 +  たちて火をくはへて走けれは火をくはへてはしるはいかなる 
 +  事そとて馬をもはしらせけれとも家のもとに走よりて人に 
 +  なりて火を家につけてけり人のつくるにこそありけれとて 
 +  矢をはけて走らせけれともつけはててけれは狐に成て草の 
 +  中にはしり入て失にけりさて家焼にけりかかるものも/60ウy124 
 + 
 +  たちまちにあたをむくう也これをききてかやうのものをは 
 +  かまへててうすましきなり/61オy125
  
-かかるものも、たちまちに、あだをむくう也。これをききて、かやうのものをば、かまへててうずまじきなり。 
text/yomeiuji/uji052.txt · 最終更新: 2018/03/08 21:23 by Satoshi Nakagawa